日本大百科全書(ニッポニカ) 「敵味方識別」の意味・わかりやすい解説
敵味方識別
てきみかたしきべつ
Identification, Friend or Foe
略称IFF。暗闇(くらやみ)のなかの戦闘など、敵か味方かを視認できない状態下で同士討ちを避けるため、古来から「山」(質問)と「川」(応答)などの合いことばをあらかじめ決めておいて使う方法が行われてきた。IFFは電波による合いことば(識別コード)のやりとりである。レーダーがとらえた目標が敵味方不明の場合、「山」という質問電波を送ると、それが味方ならば、IFF装置をもっているから、質問を受信すると同時に「川」という応答電波を自動的に送り返してくる。応答がなければ敵と推測されるが、実際にはIFFの故障、コードや方式の違い、機体の姿勢によるIFFアンテナの送受信不良、民間機の場合などもあるので、敵とは決めつけられない問題がある。合いことばは機密とされ、敵の逆用を避けるため、頻繁に変更する必要がある。IFFは1939年イギリス空軍が初めて実用化したが、IFFから派生したのが民間航空交通管制に使われている二次監視レーダー(SSR)である。地上からの1030メガヘルツの質問電波に対し、旅客機は応答装置で自動的に、自機に割り当てられているコードを1090メガヘルツで返送するから、管制官は個々の飛行機を識別できる。
[大谷内一夫・野木恵一]