敵産管理(読み)てきさんかんり(その他表記)custody of enemy property

改訂新版 世界大百科事典 「敵産管理」の意味・わかりやすい解説

敵産管理 (てきさんかんり)
custody of enemy property

戦争勃発にあたり,交戦国自国領土内にある敵の公有財産のみならず,敵により軍事作戦行動のために用いられる私有財産撤収を防止するため,私有財産尊重の原則の存在にもかかわらず,それらを管理することができる。これを敵産管理という。たとえばイギリスの1939年対敵通商法は,敵への金銭支払を防ぎ,平和回復時の取決めを予期して敵財産を保管するために敵産管理人を任命する規定をおいた。第2次世界大戦中,連合国内の敵財産は,管理または類似の行政措置のもとにおかれた。戦後の諸平和条約は,戦勝国が敵財産を一定の例外を除いて押収清算あるいは保持し,連合国とその国民の請求を満たすためにそれらをあてる権利を規定した。また,戦敗国領土内の連合国およびその国民の財産は,法的権利および利益の完全な回復および平和条約発効日における現状での返還が定められた。このような,戦勝国と戦敗国により管理された敵産の平和条約による取扱いの相違は,戦敗国が侵略戦争への参加の責任を負うという理由により説明された。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「敵産管理」の意味・わかりやすい解説

敵産管理
てきさんかんり

戦時において,交戦国が自国領域内にある敵国人の主として私有財産をその管理下におくこと。その私有財産を敵国が利用するのを防止するとともに,自国の戦時経済を維持するためにとられる措置であるが,総力戦の形をとった第1次世界大戦以降は敵産管理はきびしくなり,戦時非常措置として敵国人の財産,事業などの清算ないし処分さえも行われるようになった。敵産管理の対象となった私有財産は,本来終戦後管理を解いて返還されるべきものであるが,戦勝国にあった敗戦国の国民の財産は賠償の一部に充当されることがある。

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