料理通(読み)りょうりつう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「料理通」の意味・わかりやすい解説

料理通
りょうりつう

江戸時代の料理書。初編1822年(文政5)、2編が25年、3編が29年、4編が35年(天保6)に刊行、4巻4冊からなる。江戸の料亭八百善(やおぜん)の創業者八百屋善四郎(ぜんしろう)(甘泉堂主人)が著者。正式には『江戸流行料理通』という。1編と2編は四季に分けて本膳(ほんぜん)、精進(しょうじん)献立、江戸卓袱(しっぽく)料理、極秘伝の部、料理心得などが、3編は精進料理が中心に記されている。4編は、執筆前に上方(かみがた)から長崎へ取材の旅をして、上方から帰ってから書いたと序文にある。それで4編は、上方や長崎で学んだ普茶(ふちゃ)料理、卓袱料理について記されている。本書は八百善の名が有名だったので評判となった。なお、初編には八百善料理本と書き出しにある。

小柳輝一

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の料理通の言及

【料理書】より

…さらに天明(1781‐89)から寛政(1789‐1801)期には,1種の材料に対して100の料理法を記し,素材に関する和漢の文献を集めて知的興味を満足させるような《豆腐百珍》《甘藷百珍(いもひやくちん)》や鯛,ユズ,大根,卵などの料理秘密箱シリーズの百珍物が盛行し,中国料理の影響をうけた卓子料理の《八僊卓燕式記(はつせんたくえんしきき)》《卓袱会席趣向帳(しつぽくかいせきしゆこうちよう)》なども刊行された。一方,《都鄙安逸伝》など救荒対策のための糅物(かてもの)の書も作られ,それとは対照的に,江戸の最高級料亭のぜいを尽くした献立を中心記事とする八百善主人の《料理通》が,高名な文人,画家の序文,口絵に飾られて刊行された。江戸時代には刊年の明らかなものだけで,200点に近い料理書が刊行されているが,書名を変えただけの重版も多い。…

※「料理通」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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