北海道伊達市、壮瞥町、洞爺湖町にまたがる活火山。近年は20~30年程度の周期で噴火を繰り返し、20世紀には4回噴火した。地震など噴火の前兆を伴うのが特徴。2000年3月31日の噴火では4日前の27日に火山性地震が急増。気象庁が「数日以内に噴火の可能性が高い」との緊急火山情報を出した29日に壮瞥町など周辺3市町が避難指示を発令。最終的に周辺住民約1万6千人が事前避難するなどして、死傷者は出なかった。09年には、有珠山と洞爺湖を中心とする地域が、貴重な地形や地質を備える自然公園「世界ジオパーク」に認定された。
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伊達市と
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北海道南西部,洞爺湖の南に位置する活火山。有珠岳ともいう。山体は東西・南北とも約8km,伊達(だて)市,洞爺湖町,壮瞥町にまたがる。二重式火山で山頂部に直径1.8km,標高約500mの外輪山をもち,火口原に小有珠,大有珠(733m)の溶岩円頂丘およびオガリ山,有珠新山(669m)の潜在円頂丘のほか銀沼と呼ばれる小沼がある。また,北麓にはコンピラ山,西丸山,明治新山,東丸山などの潜在円頂丘があり,東麓には昭和新山の溶岩円頂丘がある。有珠山は完新世のはじめ,玄武岩・輝石安山岩の溶岩・火山砕屑物を噴出して成層火山を形成したのち,山頂部が爆発で崩壊して外輪山を生じ,多量の崩壊物が岩屑なだれとなって南麓を覆い,一部は内浦湾(噴火湾)に達した。その後数千年活動を休止していたが,1663年(寛文3)に山頂から流紋岩質軽石が大量に噴出し,続いて激しい水蒸気爆発がおこった。軽石は東方に降下して30kmはなれた登別温泉,白老(しらおい)付近で厚さ1mも積もり,火山灰は山麓で3m堆積した。1769年(明和6),1822年(文政5)および53年(嘉永6)の噴火では火砕流の発生を伴い,1822年にはこのため南西麓の1村が全焼し,死者50人を出し,馬1437頭を失った。小有珠は1663年または1769年に生じたものと考えられ,1822年にはオガリ山を生じ,53年には大有珠が生成した。1910年(明治43)に北麓で水蒸気爆発がおこり,地盤が隆起して明治新山(四十三(よそみ)山)が生まれ,1943-45年の活動では東麓に昭和新山が生成し,特別天然記念物に指定されている。77-78年には火口原で軽石噴火のあと水蒸気爆発が多発し,82年春まで地震,地殻変動が続き,火口原の中心が180m隆起して有珠新山が形成された。この活動では軽石・火山灰の降下,地殻変動および降雨に誘発された泥流(土石流)で,多大の災害が発生した。歴史時代の7回の活動は,いずれもケイ酸に富む流紋岩~デイサイト質のマグマ(SiO2,73~68%)によって発生している。この種のマグマは粘性が高く,噴火に先行して局地的な地震を頻発し,地殻変動を伴うのが特徴で,軽石噴火,火砕流,水蒸気爆発などのいずれかが発生し,明治新山,有珠新山のように地盤が隆起して潜在円頂丘を形成したあと,場合によっては小有珠,大有珠,昭和新山のように溶岩円頂丘を出現させた。円頂丘溶岩は粘性が著しく高いため基盤の地層をかぶりながら上昇しており,その表面は天然煉瓦や円レキ層に薄く被覆されている。
1910年の活動後,明治新山北西の洞爺湖畔で温泉の自然湧出が発見され,やがて今日の洞爺湖温泉(食塩泉,55~60℃)に発展した。北東麓の壮瞥温泉(芒硝泉,67~91℃)は50年代にボーリングによって開発された。1949年に支笏洞爺国立公園の一部に指定され,77年の噴火前は火口原の自然林に牛馬が放牧され,登山道や遊歩道,昭和新山南麓からのロープウェーも整備されていた。北麓には北海道大学有珠火山観測所(1977開設)がある。2000年3月にも噴火し,最高時約1万5000人が避難した。
執筆者:勝井 義雄+岡本 次郎
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北海道南西部、内浦湾(噴火湾)に面し、東日本火山帯に属する活火山。有珠岳ともいう。約11万年前に大規模な火砕流噴火によって、カルデラ(現在の洞爺湖(とうやこ))が形成され、約2万年前から断続的に火山活動がおきカルデラの南側に有珠火山が生じた。有珠山は玄武岩、安山岩の成層火山で、山頂部に小カルデラ(直径約1.5キロメートル)をもつ。最高峰(737メートル)の大有珠(1853年誕生)と小有珠(1769年誕生)の両潜在円頂丘(潜在ドーム)はデイサイトであり、寄生火山である昭和新山(398メートル)は1943~1945年に誕生したデイサイトの潜在ドームの一部が地表に顔を出したものである。さらに大有珠、小有珠の中間の有珠新山(1977~1978年誕生)、北側山腹の明治新山(1910年誕生。別名四十三山(よそみやま))など、多くの潜在ドームがある。1663年(寛文3)や1822年(文政5)の噴火では火砕流などで犠牲者を出す噴火がおこっている。
2000年(平成12)3月末から4月にかけて有珠山の西山西麓(せいろく)と洞爺湖温泉街のすぐ裏でマグマ水蒸気爆発が発生し、西山西麓火口群と金毘羅山(こんぴらさん)火口群が出現した。噴火活動は同年8月ごろまで続いた。西山西麓火口群の直下にマグマが貫入し、新山が形成された。噴火は前兆地震や地殻変動によって的確に予測され、住民避難がうまく行われた。過去400年の有珠山の噴火のなかでは比較的規模の小さいものであった。噴火に関連し、強い火山性地震が続発し、顕著な地殻変動がみられるのが特徴。札幌管区気象台火山監視・情報センターが常時火山観測中である。北海道大学の有珠火山観測所がある。支笏(しこつ)洞爺国立公園に属し、温泉、勝景に恵まれている。洞爺湖・有珠山地域は、2009年に「洞爺湖有珠山ジオパーク」として世界ジオパークに認定された。
[諏訪 彰・中田節也]
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(井田喜明 東京大学名誉教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域遺産」事典 日本の地域遺産について 情報
…東日本火山帯の一部をなす。これに属する諸火山は,おもに輝石安山岩,デイサイトからなり,有珠(うす)山や岩手山にはアルカリ(ナトリウム,カリウム)に乏しい玄武岩を産する。成層火山が多く,ときには溶岩円頂丘を伴い,また北海道の支笏,洞爺,濁川,北奥羽の八甲田,十和田などのように,大規模な火砕流噴出に伴った山体の陥没で生じたカルデラが多い。…
※「有珠山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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