精選版 日本国語大辞典 「卓袱料理」の意味・読み・例文・類語
しっぽく‐りょうり ‥レウリ【卓袱料理】
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卓袱は卓を覆う布のことで、いまのテーブルクロスの意。転じてその卓をいい、さらにその卓上に並ぶ料理の意に転じた。「しっぽく」と読むのは唐音である。寛永(かんえい)年間(1624~44)に鎖国によって諸外国と国交を絶ったが、長崎だけは中国とスペイン、ポルトガル、オランダの諸国に開放していた。その長崎で、主として中国料理を中心に、日本料理の一部を加えてつくりあげたのが卓袱料理であり、地名をとって長崎料理ともいった。献立の特徴は、前菜風の小菜(しょうさい)、温菜(椀物(わんもの))、大皿、大鉢、梅椀(うめわん)(甘味)に分かれ、いずれも偶数の料理をそろえて、椀以外は大皿に盛る。食卓は円形で4人、8人など偶数で決められる。長崎にこの料理が生まれると、享保(きょうほう)年間(1716~36)に京都祇園(ぎおん)下河原に佐野屋嘉兵衛(かへえ)という者が長崎から上ってきて卓袱料理を始め、好評であったという。江戸にも同様のものができたが、あまり繁盛しなかった。卓袱料理のなかから豚の角煮は関西料理に取り入れられている。鹿児島の豚料理しゅんかんと豚骨(とんこつ)も、長崎の卓袱料理からの思い付き料理とみる人もいる。日本そばの種物にも、しっぽくの名のものがある。長崎ちゃんぽん、皿うどんも卓袱料理から出たものである。
[多田鉄之助]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…(4)古く外国や他地方の影響をうけて成立し,その地方の伝統的な料理となったもの。長崎の卓袱(しつぽく)料理などがこれにあたる。近年,人口の都市集中や飲食店の多様化などによって,大都市には郷土料理店が激増し,いながらにして各地の名物や料理に接しうるようになったが,その反面,郷土料理本来の素朴さは失われつつあるのが現状である。…
※「卓袱料理」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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