都市部で導入され、多くは自動運転を採用しており、無人で専用の軌道を走る。神戸新交通のポートライナーが1981年に開業して以降、日暮里・舎人ライナー(東京)や六甲ライナー(神戸市)、アストラムライン(広島市)などが各地に造られた。大阪市営(現大阪メトロ)ニュートラム南港ポートタウン線で93年10月、住之江公園駅で暴走した車両が車止めに衝突し、200人を超える負傷者が出た。東京のゆりかもめでも2006年4月、車輪が脱落して立ち往生する事故が起きている。
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在来の一般の鉄道が、鋼鉄製のレールの上を鉄の車輪によって走行する方式であるのに対し、新交通システムは、ゴムタイヤ車輪によって専用軌道を走行する公共交通機関である。広義には最近の新技術開発によって誕生した種々の方式の交通システムを包含してとらえる場合もあるが、狭義には、日本でいうと東京の臨海地区を走っている「ゆりかもめ」(東京臨海新交通臨海線)や大阪市の「南港ポートタウン線」(ニュートラム)、神戸市の「ポートアイランド線」(神戸新交通)のように、ゴムタイヤ車輪によって案内レールに沿って走行する方式の鉄道をさしている。日本の法規上(鉄道事業法など)ではJRや一般の私鉄のような粘着方式の鉄道を普通鉄道、ゴムタイヤ車輪と案内レールによって専用軌道を走行する新交通システムのような鉄道を案内軌条式鉄道automated guideway transit(AGT)としている。
新交通システムの輸送力は1時間当り5000~1万5000人くらいであり、バスよりは多く、高速鉄道よりは少ない、中量輸送機関としてとらえられている。
[吉川文夫]
新交通システムは都市交通システムの新しい構築を考えたアメリカ政府の1968年の報告書「Tomorrow's Transportation(明日の輸送)」での指摘に始まるとされている。1972年首都ワシントンDCで開催された交通博覧会トランスポ'72で4種類の新交通システムが出展され、その2年後の1974年にテキサス州ダラス・フォートワース空港の空港内連絡輸送機関として新交通システム、エアトランスが開通した。続いて1975年にはウェスト・バーニジア州の学園都市モルガンタウンにおいて、ウェスト・バージニア大学のキャンパス間を移動する学生のため、パーソナル・ラピッド・トランジットPersonal Rapid Transit(PRT)と称する新交通システムが開通した。
日本では1970年代通商産業省(現、経済産業省)、建設省(現、国土交通省)で研究開発が推進されるなか各メーカーが試作開発に乗り出し、1975年(昭和50)に沖縄で開催された国際海洋博覧会で神戸製鋼所、神鋼電機などのグループによるKRT(Kobe Rapid Transit)と、財団法人機械システム振興協会のCVS(Computer Controlled Vehicle System)が、博覧会の開催期間中という限定した期間であるが、乗客輸送を行った。このほか、遊園地の遊戯施設としてではあるが日本車輛(しゃりょう)製造などが開発したVONA(ボナ)(Vehicles of New Age)が京成電鉄沿線の谷津(やつ)遊園内で1972年に走っている(1982年谷津遊園廃止に伴い廃止)。
恒久的輸送機関としての最初は1981年2月に開業した神戸新交通のポートアイランド線で神戸の繁華街三宮(さんのみや)から神戸港の人工島を一回りする営業キロ6.4キロメートルの路線で、おりから開催された博覧会ポートピア'81の会場への足として活躍した。その後、1981年3月に大阪市でニュートラム、1982年11月に千葉県で山万ユーカリが丘線、1983年12月に埼玉新都市交通、1990年(平成2)2月に神戸新交通六甲アイランド線、1991年3月に愛知県で桃花台(とうかだい)新交通(2006年10月廃止)、1995年11月に「ゆりかもめ」、2008年3月日暮里・舎人(とねり)ライナーなどがそれぞれ開業している。
現在世界的にみると新交通システムは都市の中量輸送機関と大きな空港の空港内連絡輸送機関として運行されているものが多い。そしてその構造、方式については新しい方式のものが続々と誕生してきており、この流れは今後も続くものと思われる。
[吉川文夫]
種々の方式がある新交通システムのうち、実用例の多い案内軌条式のメカニズムについて触れておきたい。
案内軌条式はコンクリート製の凹形をした軌道をゴムタイヤの車輪によって走行するが、走行車輪とは別に案内用の車輪があり、これが案内レールによってガイドされて走る。この案内レールの配置によって、側面にある側方案内方式と中央にある中央案内方式に分けられる。日本では側方案内方式が多く、神戸新交通、ゆりかもめ、大阪市のニュートラムなどが採用している。中央案内方式は千葉県の山万ユーカリが丘線が採用している。一般の鉄道でいうポイント、線路の分岐は側方案内方式では案内車輪が軌道に設けられた可動案内板によってガイドされて所定の進路方向に進むので、軌道を見ても鉄レールのポイントのような分岐部は見当たらない。車両は小型の2軸車を連結して運転しているが、車輪は車体に拘束されておらず、自動車の前輪のようにステアリング(ハンドル操作)できるのが一般的である。
走るための動力は電気であるが、架空電車線はなく、軌道の側面に設けられた電車線から小型の集電装置で集電してモーターによって車輪を駆動している。電圧は直流750ボルトか三相交流600ボルトが標準である。列車の運転は自動列車運転装置(ATO)による無人運転かワンマン運転である。無人運転の車両でも異常時などに備えて運転台を設備しているが、通常時はカバーで覆われている。ブレーキを含めた運転制御は二重系としており、一系統がトラブルをおこしても安全であるようにシステムが組まれている。これらの運行管理は、駅の案内放送およびホームドアも含めて中央指令所のコンピュータで列車の運転状態などを監視しながら制御されていることが多い。
[吉川文夫]
広い意味での新交通システムとしてとらえられている方式のうち、おもなものを次に紹介する。
[吉川文夫]
ロープウェーに近いモノレールといえる構造で、鋼製の軌道桁(けた)に走行輪と案内輪が接して走るが、中間部では軌道桁に張られたロープをつかんで走行、駅から出発するとき、停車するときはリアクションプレートという地上側に設けられたコイルの電磁力により加速、減速する方式である。したがって車両には動力はなく、ロープは地上の滑車の回転により動いている。広島市のスカイレールサービスがこの方式である。
[吉川文夫]
専用の走行路(ガイドウェー)を案内装置によって走行するバスで、案内輪を車両に取り付けている。このため運転士はハンドル操作を必要としない。車両は一見、バスと変わらないが、内燃動力(ディーゼルエンジン)の案内軌条式鉄道に含まれている。専用の走行路だけでなく、一般道路での運行が可能。2001年3月に名古屋市内に名古屋ガイドウェイバス(ゆとりーとライン)として開業している。
[吉川文夫]
車両に供給された電源で送風機を回転させ、車両の底部から空気を吹き出して浮上させ、この車両をロープで引っ張って走行させる方式で、車両の片方に設置された案内レールでガイドされる。成田国際空港第2旅客ターミナルビル内の本館とサテライトを結ぶシャトルシステムとして走っている。
[吉川文夫]
磁石を取り付けた平ベルトを回転させ、車両に取り付けた磁石を吸着走行するものである。1990年大阪で開催された国際花と緑の博覧会で運転されたことがあったが、2001年これと近い方式のモノレールが中央本線猿橋駅(山梨県大月市)と住宅団地を結ぶ交通システム、シャトル桂台として運行していた(2007年廃止)。
このほか海外では電車線を路面に埋設設置しゴムタイヤ車輪で走る架線レスタイヤトラムや、道路に設置されたガイドレールを斜め上から挟み、ゴムタイヤ車輪で走行するガイドゴムタイヤトラムなどが試行実験されている。都市路面交通については環境問題が大きく取り上げられている時期なので、内燃動力にかわる新しい公共交通が各種検討されるようになると思われる。
[吉川文夫]
国土交通省の鉄道事業の所管にある新交通システムでは、山万ユーカリが丘線、埼玉新都市交通、西武鉄道山口線、ゆりかもめ、横浜新都市交通、大阪市南港ポートタウン線、神戸新交通、広島高速交通、スカイレールサービス、名古屋ガイドウェイバスなどがある。
このなかでスカイレールサービスとゆとりーとライン以外は電気動力によるゴムタイヤ車輪の案内軌条式鉄道となっている。新交通システムは企業体としてみると県や市などの地方自治体が地元企業、金融機関などと共同出資した第三セクターが多いのが特徴である。特異な例としては土地開発事業者が住宅地の足として敷設した山万株式会社のユーカリが丘線がある。この線はコスト低減を意図してシステム全体が簡易にまとめられていることにも特徴がある。
輸送人員の多い東京の「ゆりかもめ」は1日平均利用者数が9万8000人(2010年度)で、東京臨海地区の輸送機関として車窓からの眺めもよいことから人気を博している。
2006年に廃止となった桃花台新交通は、走行方法がユニークであった。終端駅がループ線になっていて、車両は折り返すことなく、ループを一回りして方向を転換し、このため正規の運転台は先頭車にしかなく、客用扉もバス並みに片側であった。
[吉川文夫]
『吉川文夫著『新交通システム』(1990・保育社)』▽『斎間亨著『新交通システムをつくる』(1994・筑摩書房)』▽『石坂悦男・渡部与四郎編著『地域社会の形成と交通政策』(1997・東洋館出版社)』▽『都市交通研究会著『新しい都市交通システム』(1997・山海堂)』
新交通システムというと神戸ポートアイランドや大阪南港で運行している中量軌道輸送システムが代表的なものとして知られている。しかし,新交通システムの概念は必ずしも明確に定まったものではなく,一般には動く歩道から新しいバス運行システムまでを含む広い概念でとらえられている。広義にとれば,〈ハードウェア,ソフトウェアのいずれかの面において,既存の交通システムを改善するか,ギャップを埋めるものであり,エレクトロニクスをはじめとした新しい技術を積極的に取り入れて,交通に対処しうるようにしたシステム〉といえる。狭義にとれば,〈ハードウェアの技術革新をはかって,コンピューター制御技術を積極的に取り入れた新しい交通機関〉を指す場合もある。
新交通システムが開発されるようになってきた理由には,国によって多少の違いがある。しかし,一般には,モータリゼーションの進展とともに,都市道路の交通渋滞,自動車交通による居住環境の悪化,公共交通企業の経営悪化,トランスポーテーション・プアの交通機会不平等などの交通問題を解決し,かつ今後ますます多様化する交通目的や増大する交通需要の質的向上に対処したいという社会的要請が強くなってきたことがあげられよう。このためには,無公害で省エネルギーの交通手段の開発,自動車に匹敵しうる公共輸送サービス水準の確保,地下鉄とバスの中間程度の乗客を効率的に運ぶ交通手段の開発などが必要とされてくるが,最近における技術革新,とくにコンピューター技術,通信技術の目覚ましい発達と,車両技術,建設技術の進歩とが相まって,前述の社会的要請に基づく新交通システムの開発の必要性に技術的に対応できるか,あるいはその可能性が考えられるようになった。
アメリカで新交通システムの研究開発が大規模に促進されるようになった契機は,政府の積極的な動きにより開かれた。〈1964年都市大量輸送法〉を1966年に修正した際,〈大気を汚染することなく,かつ健全な都市計画に寄与するような方法で,人および貨物を安全,迅速に輸送する新しい都市交通システムの研究・開発およびデモンストレーションに関する計画〉の検討を,地方公共団体,民間企業,大学などに指示し,国が指導することとした。この成果は68年に《明日の交通Tomorrow's Transportation》と題する研究報告書として発表された。そこには,アメリカが直面する都市交通の混乱,自動車による環境破壊などを解決するための可能性が,新しい都市交通システムの革新的なアイデアを中心に提案されている。これ以降,政府の研究助成金が大幅に増額され,各地で研究開発が進められた。72年にはワシントンD.C.でトランスポ’72が開催され,4種類の新交通システムPRT(personal rapid transitの略)が公開され,世界に大きな影響を与えた。その後,75年にアメリカ合衆国議会技術評価局が新交通システムの開発状況を再検討し,その結果を〈automated guideway transitの評価〉としてまとめた。政府は,これに基づき新たに都心型新交通システム計画として,DPM計画(Downtown People Mover Projectの略)を企画し,全米からモデル都市を選び,計画の策定を進めたが,81年にレーガン大統領の政策により中断されている。すでに供用中の代表的な新交通システムとしては,ウェスト・バージニア州モルガンタウンでの約6kmの路線,テキサス州ダラス・フォートワース空港でのエアトランスAir Transなどが挙げられる。
ヨーロッパ諸国では,OECDの研究部会を中心に,1969年に主要活動地区における新交通システムの研究開発の問題が取り上げられ,検討が進められ始めた。73年にパリでトランスポール・エキスポ1973が開催され,ヨーロッパ諸国における新交通システムの開発状況が公開された。イギリスではキャブトラック構想をはじめとする各種の新交通システムが提案されたが,なかなか実現せず,その後国内のエネルギー事情の緩和もあって,目下開発を中断している。フランスは,PRTとしての小型車両の高密度運行を可能にしたアラミスARAMISなどのシステムの開発を進め,83年リールにバルVALを建設し,運用している。ドイツは,ヨーロッパ諸国の中でいちばん積極的に開発を進めており,PRTとしてキャビネン・タクシーCabinen Taxiを完成し,病院などで短距離交通として実用化している。
日本では1970年前後より通産,運輸,建設の各省や地方自治体,民間企業などで,新交通システムの研究開発の検討が開始され,通産省で官学民の協力によりPRTの一種として開発されたCVS(computer controlled vehicle systemの略)をはじめとして,民間企業により数年間のうちに10機種ほどのシステムが開発された。当初は小型から中型まで各種のものが混在したが,その後,主として経営採算性から列車型の中量軌道輸送システムが主流となっている。また,バスのサービスと自動車の高速性を巧みに組み合わせたデュアル・モード・バス・システムが建設省と民間企業の共同で開発された。また,新交通システムを都市交通手段として都市内に導入するため,74年から政府は建設費補助制度を創設。この制度により,神戸,大阪,小牧,横浜などに新交通システムが建設され,運用されている(表1)。
今日,各種タイプの新交通システムが開発されているが,輸送形態,動力,走行形態,制御の面から分類して,その組合せを考え,実際に存在しえないものを除くと,表2のように,連続輸送1種,非連続輸送4種の5種類になり,さらに二つ以上の特性をもつデュアル・モード・システムを加えて,合計6種類に分けられる。日本では従来から運輸政策審議会で,上記の輸送形態,動力,走行形態に着目して,連続輸送システム,軌道輸送システム,無軌道輸送システム,複合輸送システムの4種類に分類している。このほか,推進方式(機械式,空気力学的および電磁式推進),支持方式(機械的,空気力学的および電磁的支持),案内方式(機械的,空気力学的,電磁的および無線式案内),分岐方式(地上および車上分岐)など,技術面で分類することもできる。
(1)連続輸送システム 動く歩道やそれを高速化したシステム,またはそれにカプセルをのせたシステムの総称である。一般に方向性をもった交通需要の多い短距離交通用で,主として空港や鉄道駅などの交通結節点や再開発地区に適している。
(2)軌道輸送システム 一般に専用のガイドウェーを専用の車両がコンピューター制御により自動走行するもので,AGT(automated guideway transitの略)と呼ばれる。モノレールもこの軌道輸送システムの一種として考えることもできる。アメリカ合衆国議会技術評価局の分類によれば,AGTはSLT(shuttle-loop transitの略),GRT(group rapid transitの略),PRTに分けられる。SLTは往復またはループ状のガイドウェーを走行する新交通システムである。中間駅や分岐が少なく,都市への適応性が高く,自動運転により省力化をはかることができる。主として空港などに適用される。アメリカのアトランタ,タンパ,シアトル・タコマなどの諸空港で実用化されている。GRTはSLTより分岐が多く,大量輸送,高速走行が可能なシステムで,都市への適応性が高く,経済面からみてももっとも実用性が高い。主として大都市圏の端末,地方圏の基幹交通として適用される。アメリカのダラス・フォートワース空港やモルガンタウンのシステムがGRTに属する。PRTは2~6人乗りの個別車両が,ガイドウェーを乗客の起終点間をノンストップで自動走行するシステムである。自動車のような利便性,快適性,隔離性をもち,新都市への適用性があるが,現段階ではそこまでの適用に至っていない。日本のCVS,フランスのアラミス,ドイツのキャビネン・タクシーはPRTとして開発されたものである。また,都市間高速輸送システムとしては磁気浮上方式のものが,日本をはじめ,ドイツ,アメリカなどで開発され,実験中である。
(3)無軌道輸送システム ディマンド・バス・システムやシティ・カー・システムが相当する。前者はバスに無線通信システムを導入し,路線をあらかじめ定めておかないで,乗客の要求に応じて乗客のいる地点から目的地まで短時間で運べるように運行するシステムで,おもに郊外住宅地,新都市や過疎地に適用される。後者は小型自動車を公共的に利用するレンタカー・システムである。おもに都心部,大学キャンパスなど面的交通に適用される。
(4)複合輸送システム デュアル・モード・システムと呼ばれ,専用ガイドウェー上の自動運転と,一般道路上の有人運転を組み合わせたシステムで,乗換えなしに一貫輸送できる点に特徴があるため,都市交通への適応性が高いと考えられている。
執筆者:新谷 洋二
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