日本大百科全書(ニッポニカ) 「日本社会事彙」の意味・わかりやすい解説
日本社会事彙
にほんしゃかいじい
日本で最初の西欧的百科事典。全二巻。1890~91年(明治23~24)発行。編者の田口卯吉(うきち)は1878年(明治11)大蔵省官吏を辞退、翌年、渋沢栄一の後援で『東洋経済雑誌』を発行して自由貿易主義を主唱した。彼はまた『泰西政事類典』『日本人名辞書』『国史大系』などを出版、『群書類従』を再刻するなど大出版を継続したが、その目的は、本格的大事典の『日本百科事典』を編集して、当時イギリスから発行されていた国際的百科事典である『ブリタニカ百科事典』に対抗するにあった。これら一連の出版のために、豊富な文献がすでに用意されていたので、この『日本社会事彙』はこれらの文献を十分に活用することができた。内容は、日本の政治、社会、経済など広い領域にわたり、日本文化を取り入れ、集約し、評論したものであった。1881年の予約募集は予約者70人にすぎなかったが、1901年(明治34)に行った第二次募集では3000人の予約を得て自信を深めた。この上下二巻、索引一巻の事典は、正確な知識と適正な意見によって、わが国初めての文化史としてようやく評価され、その死(1905)後第3回予約を1908年に行うに至ったものの、『日本百科事典』編集という田口の大事業は未完に終わった。
[彌吉光長]