曇遷(読み)どんせん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「曇遷」の意味・わかりやすい解説

曇遷
どんせん
(542―607)

中国、南北朝末から隋(ずい)代にかけて活躍した仏教学者。36歳のとき、北周武帝による仏教迫害を逃れて南中国建康(けんこう)(南京(ナンキン))に行き、道場寺にあって、真諦(しんだい)の訳出した『摂大乗論(しょうだいじょうろん)』を中心とした唯識(ゆいしき)学を学び、のちその注釈書をつくった。『摂大乗論』の学説華北の仏教界に知られるようになったのは、ひとえに彼の功績であるといわれる。『摂大乗論疏(しょ)』『亡是非論(ぼうぜひろん)』『大乗起信論疏』などの著述がある。そのほか、古来、天台慧思(てんだいえし)と伝えられる『大乗止観法門』の作者も、この曇遷ではないかと考えられる。

[柏木弘雄 2017年3月21日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「曇遷」の意味・わかりやすい解説

曇遷
どんせん
Tan-qian

[生]大統8(542)
[没]大業3(607)
中国,隋の摂論宗を北中国に広めた僧。北周の武帝の迫害を逃れて南中国に行き,真諦の訳した『摂大乗論』を入手,隋代にその注釈書を作った。

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