インド大乗仏教の論書。無著(むぢやく)(アサンガ)著。4世紀の成立。原題《マハーヤーナサングラハMahāyāna-saṅgraha》。略称《摂論(しようろん)》。サンスクリット語原典は散逸している。チベット語訳と4種の漢訳(仏陀扇多訳,真諦訳,玄奘訳,達摩笈多訳)が現存する。瑜伽行唯識派(ゆがぎようゆいしきは)の立場から大乗仏教の全体を体系化したものである。10章からなり,アーラヤ識の三性(さんしよう)説を中心に唯識を説き,六波羅蜜,十地,三学,涅槃,仏身までを論じている。世親と無性(むしよう)による注釈があり,中国では真諦訳の本論にもとづいて〈摂論宗〉が起こった。
→唯識説 →唯識派
執筆者:末木 文美士
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
仏教書。インド仏教瑜伽唯識(ゆがゆいしき)説の大成者無著(むじゃく)の代表的著作。サンスクリット原典は散逸したが、仏陀扇多(ぶっだせんた)、真諦(しんだい)、達摩笈多(だつまぎゅうた)、玄奘(げんじょう)による漢訳4本、さらにチベット訳が現存する。大乗仏教の精髄を唯識説の立場から10章にまとめて示した論典。中国では、玄奘訳以前に真諦訳がもっともよく流布し、これを中心に摂論(しょうろん)宗がおこった。649年(貞観23)完了の玄奘訳が現れてからは、これが真諦訳にとってかわり、法相(ほっそう)宗ではもっとも基本的な典籍の一つとして盛んに研究された。
[袴谷憲昭]
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