書出(読み)かきだし

精選版 日本国語大辞典 「書出」の意味・読み・例文・類語

かき‐だし【書出】

〘名〙
① 書き出すこと。抜き書きすること。また、そのもの。書き抜き。抜き書き。
※中右記‐天永二年(1111)三月八日「近代年中行事書出進上殿下了。是依其仰也。近代所行也。公事許所書出也」
② 書き始めること。また、その部分。書き始め。冒頭
※虎寛本狂言・文山立(室町末‐近世初)「先書出しを扨も扨もと書た」
③ 請求書。勘定書。つけ。もともと、大福帳の個人別口座から売掛金を書き出して作ったことから生じたことばという。江戸時代、盆と暮れの二回が決算期であったため、その時に請求書を出して、支払いを求めた。《季・冬》
※評判記・けしずみ(1677)「十五日ぎりのあげやのかき出し。かいてのためにみじかきことさも有べし」
④ 古文書学上の文書名称の一つ。冒頭に用件部分を大書する文書の称。文書のはじめに、主人が家臣に与える名字をしるした一字書出などをいう。
※玉塵抄(1563)三八「高穎と云者、官爵にあがるかきだしの詔書なぞを筆とりをして」
⑤ 歌舞伎で、芝居番付や芝居看板の最初に書かれる俳優。または、その俳優の地位。京阪地方では、一筆(いちふで)、初筆(しょふで)などともいう。ふつう、立役の大立者で、二枚目、つまり花形の人望ある若手の役者がこの地位に置かれる。座頭(ざがしら)、つまり留筆(とめふで)に次ぐ地位。最近では、この地位が座頭を表わすことが多い。
洒落本・箱まくら(1822)下「その名前のはりやうが、しばゐのまねきの看板とをなじ事にて、よううる子を中じく、かきだし、とめふでと、夫々(それそれ)にすへる也」
書状などの文書の冒頭に記す文言拝啓前略など。

かき‐だ・す【書出】

〘他サ五(四)〙
① 必要な箇所、重要な部分を抜き出して書く。
浮世草子世間胸算用(1692)二「当地で定まって銀(かね)かる人をひとりひとり書出(カキダ)し」
② 書いて差し出す。書いて提出する。また、書いて人目につくところにかかげる。
※寛永刊本蒙求抄(1529頃)二「新詞はあたらしい詞を書だいたぞ」
③ 書き始める。書きいだす。
※洒落本・陽台三略(1751‐64頃)「われよりも心ざしゐ参らせ候へど、うは気と御しかりもうたてくなどかき出し、それよりだんだん実らしくかきつづけ候へば」

かき‐いだ・す【書出】

〘他サ四〙
① 書いて文字に表わす。書き表わす。書きいず。
※土左(935頃)承平五年一月二〇日「かのくにびとききしるまじくおもほえたれども、言(こと)の心を男文字にさまをかきいだして」

かき‐い・ず ‥いづ【書出】

〘他ダ下二〙 書き表わす。書きいだす。
※宇津保(970‐999頃)楼上下「二三人はかきいでてたてまつり給ふ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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