歌舞伎の芸のかたち,およびその役柄。本来は〈和事(わごと)〉または〈やつし〉と呼び,優美な男性が色恋を演じる芸のかたちである。白粉(おしろい)を塗っている色男の役で,この役柄の中に,〈つっころばし〉というコミカルな味わいのより濃い役柄(たとえば《双蝶々曲輪日記》の与五郎)も含まれる。〈二枚目は三枚目の心で演じよ〉という口伝があり,それが進んだときにこういう役柄が生まれた。ほかにやや手ごわい〈ぴんとこな〉(たとえば《伊勢音頭恋寝刃》の福岡貢)もある。語源は,江戸中期の上方で,顔見世のときの看板のうち,立役を並べた6枚(のちに8枚,11枚)看板の中でやつし,濡事師(ぬれごとし)の位置が2枚目であったことによる。現在では,歌舞伎ばかりではなく,映画,演劇にひろく使われる。
執筆者:渡辺 保
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