出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
天皇が発する公文書で,国民に公示されるもの。大日本帝国憲法時代の〈国葬を賜ふ勅書〉のように,特定の人に対するものであって公示されない勅書と並ぶ詔勅の一種。帝国憲法の下では,立太子の詔書のように皇室典範・皇室令に基づき発せられる〈皇室の大事を宣誥(せんこう)〉する詔書(宮務詔書)と,宣戦の詔書のように憲法・法律などに基づき発せられる〈大権の施行に関する勅旨を宣誥〉する詔書(政務詔書)の2種があった(公式令1条)。公式令がその形式を定め,天皇の署名,捺印の後,宮務については宮内大臣・内閣総理大臣が,政務については内閣総理大臣・国務各大臣が副署した。日本国憲法の下では,大日本帝国憲法下での皇室典範などの宮務法は廃されたので宮務詔書は存在せず,国会召集の詔書や衆議院解散の詔書のように,天皇の国事に関する行為に関連して発せられるものに限られている。現在,公式令のようなものは存在しないが,詔書には内閣の助言と承認が必要であり,天皇の署名(御名),捺印(御璽)の後に内閣総理大臣の副署がなされている。
→詔勅
執筆者:横田 耕一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
天皇が発給する最高の文書。古代の律令(りつりょう)体制のもとで公式令(くしきりょう)にその規定がみえるが、近代では1907年(明治40)2月制定の公式令によって書式、発布手続が規定された。それによれば、詔書は皇室の大事を宣布し、践祚(せんそ)、即位、宣戦、講和、帝国議会召集、衆議院解散など天皇大権の施行に関する勅旨を国民に宣布するものとされている。形式は、天皇が親署し御璽(ぎょじ)を捺印(なついん)、皇室関係のものは宮内(くない)大臣が年月日を記入し、総理大臣とともに副署する。大権施行に関するものは総理大臣が年月日を記入し、他の国務大臣とともに副署する。第二次世界大戦後の日本国憲法のもとでは全面的に廃止され、ただ国会召集、衆議院解散など、天皇の国事行為の範囲に限って詔書の形式が用いられている。
[時野谷勝]
律令制下,天皇の命令を下達する公文書。唐の制書式を継受して公式令(くしきりょう)に勅旨とともに定められたが,詔書は臨時の大事に用いられる。宣命体(せんみょうたい)で記され,本来群臣に口頭で宣したと考えられるが,漢文体のものもある。養老令によれば発令の手続きは,天皇の命をうけ内記が本文を起草,天皇が日を書き入れる。これを中務(なかつかさ)省にとどめて案とし,写しに中務卿以下が署名し,内印を捺して太政官に伝え,大臣以下が署名し,大納言が天皇に覆奏して施行許可を求める。天皇は最後に「可」の字を書き加える。内官にはこの写しに施行を命じる太政官符を添え,外官には詔書の内容を引用した太政官符を作成して伝達する。天皇の意志が詔書のかたちで施行されるには多くの国家機関が介在した。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…それを大別すると,(1)(a)天皇の仰せを下達し,(b)または天皇に奏上する文書,(2)(a)皇太子,三后(太皇太后,皇太后,皇后)の仰せを下達し,または(b)上申する文書,(3)(a)官庁間での命令下達,(b)上申,(c)互通の文書,(4)個人から官庁へ上申する文書,(5)特殊文書,に分けられる。(1)(a)は詔書,勅旨両式と飛駅下式で,詔書は臨時の大事,勅旨は尋常の小事,飛駅下式は地方有事の際に用いる。(b)は太政官から奏上するもので,事の大・中・小によって論奏・奏事・便奏の3式に分かれている。…
…(A)公式様文書 養老令の公式令にその書式が規定された文書で,中国の直接的な影響を受けたものである。その形式は21にのぼるが,代表的なものを挙げると,まず(a)詔書(しようしよ),(b)勅旨(ちよくし)がある。ともに天皇の命を伝える文書であるが,詔書は臨時の大事に,勅旨は尋常の小事に用いられた。…
…やがて令の制定により公文書制度が整えられるに従い,詔も文書として記されるようになり,天皇のことばをそのまま和文で表現する詔すなわち宣命と,中国風の漢文の詔の両様式が成立した。この詔書の書式および作成・施行の手続を定めたのが,大宝・養老公式令の詔書式である。詔書式は詔書の冒頭の文言として〈明神御宇日本天皇詔旨〉以下5形式を定めているが,これらの文言は実例では宣命体の詔に見られるものであるから,書式例は宣命体のものを掲げたことが知られる。…
…広くは,天皇が文書で行うすべての行為を意味し,大日本帝国憲法時代には帝国憲法,皇室典範,皇室令,法律,勅令,条約,予算,軍令,勅書,詔書などの形式があった。狭くは,詔書と勅書を意味する。…
※「詔書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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