有棘細胞がん(読み)ゆうきょくさいぼうがん(その他表記)squamous cell carcinoma (epithelioma)

家庭医学館 「有棘細胞がん」の解説

ゆうきょくさいぼうがん【有棘細胞がん Squamous Cell Carcinoma】

[どんな病気か]
 暗紅色(あんこうしょく)のかたい結節や潰瘍(かいよう)ができ、表面に汚いかさぶたがついて悪臭がすることもあります。
 有棘細胞がんは、いろいろな前がん症から生じることが知られています。たとえば、子どものころのひどいやけどやけが傷跡、治療のために受けた放射線による皮膚炎の箇所などから生じるのです。
 最近は、高齢者の顔面などにみられる日光角化症(にっこうかくかしょう)から生じるものが増えています。また、色素性乾皮症(しきそせいかんぴしょう)という遺伝性疾患や慢性砒素中毒患者(まんせいひそちゅうどくかんじゃ)などにもよくできます。
●自己発見法
 このがんは、黒色になることはほとんどありません。治りにくく、しだいに増大するしこりや潰瘍(かいよう)ができたら、皮膚科専門医の診察を受けましょう。
[治療]
 有棘細胞がんの悪性度は、メラノーマ基底細胞がんとの中間で、ときにリンパ節などへ転移することがありますが、手術で取りきれればほとんどの場合、完治します。
 転移した場合は、化学療法、放射線療法が行なわれます。効果はかなり期待できます。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「有棘細胞がん」の意味・わかりやすい解説

有棘細胞癌
ゆうきょくさいぼうがん
squamous cell carcinoma (epithelioma)

皮膚癌の一つ。臨床的には腫瘍が結節状,潰瘍状あるいは花キャベツ状に増殖し,特有の悪臭を放ち,しばしば所属リンパ節に転移する。顔面,手背などの露出部に生じるほか,ケロイド,瘢痕,放射線皮膚炎,尋常性狼瘡円板状紅斑性狼瘡,いぼ状表皮発育異常症,色素性乾皮症,ウェルナー症候群,外陰萎縮症などの病変を母地として,有棘細胞癌が発生する。また,ボーエン病,老人性角化腫,白板症などの表皮内癌性病変が悪化し,基底膜を破って浸潤性に増殖して有棘細胞癌化する。有棘細胞癌は組織学的には扁平上皮癌と同一で,個々の腫瘍細胞が角化傾向を有する。各腫瘍細胞の異型性および角化傾向の程度により A.ブロダーは1~4度に分類しており,予後は発生部とこの分類による。

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世界大百科事典(旧版)内の有棘細胞がんの言及

【皮膚癌】より

…皮膚を構成する表皮細胞や,汗腺,脂腺,毛包などの皮膚付属器から発生する癌をいう。有棘(ゆうきよく)細胞癌と基底細胞癌が代表的なもので,汗腺癌,脂腺癌などはきわめてまれなものである。このほか,癌細胞が表皮内のみにとどまっているものを表皮内癌といい,日光角化症,ボーエン病,乳房ページェット病,外陰部ページェット病がある。…

※「有棘細胞がん」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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