日本大百科全書(ニッポニカ) 「木蘭辞」の意味・わかりやすい解説
木蘭辞
もくらんじ
中国の北朝(5、6世紀)ごろの長編の叙事詩。北方の横吹(おうすい)曲の一つであり、『楽府(がふ)詩集』巻25に収められている。木蘭という若い女性が、年老いた父親にかわって男装して出征し、遠く寨北(さいほく)の地に転戦して功をたて、高い爵位を獲得するが、それを捨てて帰郷する、という素朴で民謡的な調子の作である。この「木蘭従軍」の説話は今日でも広く華北・華中に流布し、各地に木蘭の廟(びょう)があり、戯劇や講談にも取り入れられている。また映画(1937年映画化、39年日本公開)や劇に上演された。日本でも戦時下の1941年(昭和16)白井鉄造作・演出の音楽劇『木蘭従軍』として上演されたことがある。
[藤田祐賢]
『伊藤正文・一海知義編訳『中国古典文学大系16 漢魏六朝詩集』(1972・平凡社)』