日本大百科全書(ニッポニカ) 「未熟土」の意味・わかりやすい解説
未熟土
みじゅくど
immature soil
地球上に陸地が生ずると、岩石圏と大気圏との接触による自然の変化が始まる。すなわち、岩石が地表付近での侵食、風化などの作用で土壌に変わるが、それには長い時間が必要である。熱帯多雨地方のように強い風化作用が働く所でも、いわゆる成熟した土壌(ラトソルまたは赤色土)が生成するには数千年の期間がかかると思われる。成熟土では地表から1メートル以上の深さの垂直断面に層位の分化が明瞭(めいりょう)に認められ、一般にその土地の気候と植生に特徴づけられた土壌型となる。それに対し、十分な生成期間を経ていない土壌の層位分化は不明瞭で、その場所の気候や植生などの環境を反映した断面形態をもっていない。このような未発達段階の土壌を未熟土という。未熟土には母材の岩石の鉱物組成や堆積(たいせき)地層の粒状などがあまり変わらずに残っている。たとえば山地の斜面では、母岩の機械的風化物からなる角礫(かくれき)質粗粒土壌が地表を薄く被覆している。河川の氾濫(はんらん)堆積物による新しい扇状地や氾濫原平野には、泥土混じりの砂礫からなる軟弱な土壌が、未熟土の状態で存在する。
[浅海重夫]