改訂新版 世界大百科事典 「本店支店」の意味・わかりやすい解説
本店・支店 (ほんてんしてん)
商人の営業活動の中心たる場所である営業所のうち,全営業の統轄的役割を果たす営業所が本店であり,独立して営業所たる要件を満たすが基本的には本店の指揮に従属している営業所が支店である。それぞれの営業所が本店あるいは支店にあたるか否かは,上記の実質的基準に従って判断され,本店・支店とも,本店・支店という名称を付す必要はなく,たとえば支社,営業所,出張所,などの名称を持っていても,営業所の実態が備わっていれば法律上の支店になる。ただし,会社の場合には,本店所在地が定款の記載事項であり(合名会社,合資会社では支店の所在地も定款の記載事項である。商法63条4号,148条,166条1項8号,有限会社法6条7号),また,本店・支店は登記事項とされている(商法64条1項2号,65条等)。ところが,この定款ないし登記簿に記載された本店・支店が前記の実質的判断基準に従って決まる本店・支店と食い違うことがありうる。このことから,会社の本店・支店については,定款ないし登記簿の記載により形式的に決定せざるをえないとする考え方が支配的である。本店・支店の両者を含む営業所一般については,当該営業所の行った商行為によって生じた債務(特定物の引渡しを目的とする債務を除く)の履行場所とされる(516条),裁判管轄の決定基準とされる(民事訴訟法4条等),商業登記の管轄の決定基準とされる(商法9条),民事訴訟法上の書類の送達場所とされる(民事訴訟法169条)などの法律上の効果が結びつけられている。また,支店については,その支店における支配人をおくことができる(商法37条),支店所在地における登記についての特別規定が適用される(10,13条等)などの法律上の効果が結びつけられている。株式会社の本店については,株主名簿,有限会社の本店については社員名簿を備え置くことが義務づけられている(263条1項等)。
執筆者:山下 友信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報