杯を洗うため水を入れて酒席に置く器。〈さかずき洗い〉ともいう。明確な年代はわからないが,江戸後期から使用され始めたもので,寛政~天保(1789-1844)ころの世態の推移を書きとどめた《寛天見聞記》(著者不詳)によると,著者の幼いころの酒宴は〈鉄銚子(ちようし)〉と〈塗杯〉を使うのが通例であった。それが染付の〈徳利(とくり)〉と陶磁器の〈猪口(ちよく)〉を使うようになり,〈盃(さかずき)あらひとて丼に水を入れ,猪口数多浮めて詠(なが)め楽しみ……〉というように変化したのは〈近来の仕出し〉,つまり最近はじまったことだとしている。また,1849年(嘉永2)版のはやり物番付に〈盃スマシノ丼〉として杯洗が挙げられていたことを《守貞漫稿》は伝えている。いずれにせよ,江戸後期からこの器が使用されだしたのは,他人が口をつけた杯を不潔とする意識が発生したためで,古くからの酒宴の儀式性が大きく退行したことを示すように思われる。
執筆者:鈴木 晋一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…
[日本の酒器]
酒を飲むために用いられる容器の総称。口に運んで飲むための杯やグラス,それらに酒を注ぐための銚子(ちようし)や徳利(とくり∥とつくり)が主要なものであるが,杯を置く杯台,杯を洗うための杯洗(はいせん∥さかずきあらい),酒を貯蔵または運搬するために用いられる甕(かめ)や樽をも含む。ここでは酒を注ぐ器を中心に記述するが,日本でも古く土器のほかに酒器として用いられたものに,ヒョウタンやミツナガシワ(カクレミノあるいはオオタニワタリとされる)のような植物の実や葉,あるいは貝殻のような自然物があった。…
※「杯洗」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新