日本大百科全書(ニッポニカ) 「東京大学宇宙線研究所」の意味・わかりやすい解説
東京大学宇宙線研究所
とうきょうだいがくうちゅうせんけんきゅうじょ
宇宙線の観測と研究を行う東京大学附置の千葉県柏市にある研究所。全国共同利用型附置研究所でもある。英語ではInstitute for Cosmic Ray Research, University of Tokyoと表記し、略称はICRR。前身は1950年(昭和25)に朝日学術奨励金で建てられた乗鞍岳(のりくらだけ)の朝日小屋で、1976年に東京大学宇宙線研究所となった。2022年(令和4)時点で、スーパーカミオカンデなどの地下実験施設を用いて、ニュートリノや陽子崩壊などの素粒子物理学、宇宙素粒子物理学などを研究する宇宙ニュートリノ研究部門、高エネルギーγ(ガンマ)線、最高エネルギー宇宙線などを観測する高エネルギー宇宙線研究部門、重力波をはじめ、観測および理論から研究を行う宇宙基礎物理学研究部門の三つの研究部門で構成される。
宇宙ニュートリノ研究部門には、スーパーカミオカンデ、建設中のハイパーカミオカンデ、ニュートリノ振動を精密測定するT2K、XMASS(エックスマス)を含む暗黒物質直接探索実験グループがある。
高エネルギー宇宙線研究部門には、最高エネルギー宇宙線を探索するために、アメリカのユタ州に宇宙線望遠鏡を設置したテレスコープ・アレイ実験グループ、γ線を放射する天体を観測するチェレンコフ宇宙γ線グループ、高エネルギーγ線、超高エネルギー宇宙線、太陽フレアー等を探索するために空気シャワー観測装置を用いるチベットASγ実験グループ、理論的に宇宙線粒子の起源となるさまざまな高エネルギー天体現象の謎に迫る高エネルギー天体グループ、超高エネルギー宇宙γ線を、世界最高感度で広視野連続観測することを目的とするALPACA(アルパカ)実験グループがある。
宇宙基礎物理学研究部門には、重力波天文学の創生と発展を目ざす大型低温重力波望遠鏡KAGRA(かぐら)グループ、大型望遠鏡を用いた深宇宙探査により遠方銀河を探索し、宇宙初期の銀河形成過程を探る観測的宇宙論グループ、素粒子と宇宙に関する理論的研究を行う理論グループがある。
[編集部 2023年4月20日]