毛用に飼われるラクダ科の哺乳類。ペルー南部とそれに接するボリビア,アルゼンチン北部の4200~4800mのアンデス高地で放飼いにされる。肩高90cm,体長1.5m前後,ラマ(リャマ)に似るが小さく頭と四肢が短い。背が丸く尾の基部が高まらない。長い首をもち,豊かな毛に覆われる。後脚のたこはあるものとないものとがある。体毛がきわめて長く,地面に接するほどの長毛品種と毛が比較的短い短毛品種がある。毛色は一様な黒色,褐色,ときに淡褐色,白色で,斑をなすことはまれ。妊娠期間約330日,1腹1子。毛は2年ごとに,一生に3~4回刈られ,1回で約3kgの絹状の毛が得られる。野生種は知られず,ラマとともにグアナコを家畜化したものといわれるが,アルパカとラマの間には容易に雑種ができるにもかかわらず中間型がないため,絶滅した野生種から生じたとの説も有力。アルパカは18世紀末以来,毛用家畜としてイギリスやオーストラリアに多数移入されたが,いずれも増殖に成功していない。
アルパカは主としてケチュア族とアイマラ族のインディオによって飼育されている。毛は保温性,光沢,肌触りなどに優れ,古代から上質の織物がつくられてきた。現在は牧民にとって重要な現金収入源でもある。染色せずに,これら自然の色を組み合わせるだけで,さまざまな文様の投石縄(オンダ)や,調和のとれた織物を織りあげることができる。肉は食用にされるが,乳は利用されない。また,ラマのように駄獣として使われることもない。牧畜の形態や牧民の生活はきわめて伝統的。1家族当りおよそ数百頭の群れが,昼は草原に放牧され,夜は石積みの囲い場に集められる。小規模な季節移動も行われる。
執筆者:今泉 吉典+稲村 哲也
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哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目ラクダ科の動物。南アメリカのチリ、ペルー、ボリビアのアンデス山岳地帯で飼われている家畜である。原種の野生種はすでに滅びたものと考えられている。体形はラマに類似するが、やや小形で、体長2メートル、肩高90センチメートル程度である。紀元前4~3世紀にはすでに家畜化されていたと考えられ、その主目的は毛用であったと思われる。事実、アルパカの毛並みは非常にしなやかで毛質はよく、毛の長さは10~12センチメートル、長いところでは40センチメートルにも達する。20世紀末でもペルー、ボリビアでは200万頭が飼育され、ヒツジが果たす役割を担っている。毛は衣類やカーペットに用いられ、その製品もアルパカとよばれている。妊娠期間は330日、1産1子である。日本では名古屋市東山動植物園、鹿児島市平川動物公園などで飼育されている(2003年時点)。
[中川志郎]
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…羊毛はメンヨウから切り取った毛で,ウールともいい,人間が利用する動物の毛の大部分を占める。動物の毛としてはヘア(獣毛)と呼ばれるラクダ毛,カシミア毛,モヘア(アンゴラヤギ毛),アンゴラウサギ毛,アルパカ毛も繊維として使われる。ヒツジは有史以前から中央アジア地方で飼育されたらしい。…
※「アルパカ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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