飛騨山脈(北アルプス)に沿い、北から
剣ヶ峰(三〇二六メートル)・
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長野・岐阜県境北部,飛驒山脈の南端に位置する火山群。北から十石山,烏帽子(えぼし)岳,鶴ヶ池,摩利支天,一ノ池,高天原(たかまがはら)の六つの安山岩質火山が並び,それらの間に,最高峰である一ノ池火山火口壁の剣ヶ峰(3026m)をはじめ,四ッ岳(2745m),大丹生(おおにゆう)岳(2698m),恵比須岳(2831m),里見岳(2824m)など22の峰が連なり,比較的起伏の緩やかな山頂部を形成している。乗鞍岳の名称は,岐阜県側から見た山容がちょうど馬の背に鞍を置いた形に似ていることに由来するという。山頂部には亀ヶ池,不消(きえず)池,鶴ヶ池,権現池などの火口湖や,溶岩流による堰止湖である五ノ池,大丹生池などがある。これらの池畔には,亀甲砂礫や条線砂礫として知られる構造土がみられ,付近は日本屈指のハイマツの大群落地である。また,摩利支天山頂には東京天文台(現,国立天文台)の乗鞍コロナ観測所(1949完成),その南側に東京天文台(現,東京大学宇宙線研究所)の宇宙線観測所(1950完成)がある。鶴ヶ池畔の畳平(2740m)までは長野・岐阜両県からバス登山道路が通じ,畳平のバスターミナル付近には,乗鞍神社本宮遥拝所,電報電話局,郵便局,営林署,診療所,旅館,山小屋などの施設がある。
長野県側山麓の乗鞍高原は標高1300~1800mの広大な高原で,1952年の乗鞍高原スキー場開設以来観光開発が進み,番所(ばんどこ)や鈴蘭小屋(1976年白骨(しらほね)温泉上流部からの引湯成功以後発展)付近に宿泊・保養施設が開かれて,四季の行楽客を集めている。また,山頂から東麓の位ヶ原(くらいがはら)にかけての雪渓では,夏スキーが楽しめる。岐阜県側の乗鞍スカイライン(1973完成。2002無料開放)は,平湯峠から畳平までの全長14.4km,高度差1060mの観光道路で,バス登山道路としては日本一の高さを誇る。車窓からの眺めは,高度が増すにつれて変化する植生と遠景の雄大な山並みとが対照的で,すばらしい山岳景観を楽しめる。なお2003年より乗鞍スカイラインと乗鞍エコーラインでマイカー規制が実施されている。
執筆者:上野 福男
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長野・岐阜県境にある北アルプス南端の山。南北に連なる大丹生岳(おおにゅうがたけ)、烏帽子(えぼし)岳、恵比須(えびす)岳、富士見岳、最高峰の剣ヶ峰(けんがみね)(3026メートル)、摩利支天(まりしてん)岳などの総称で、全体としてはコニーデ型の成層火山である。山名は山容がなだらかで、馬の鞍に似ているところからつけられたとされる。山頂部には権現(ごんげん)池や鶴(つる)ヶ池などの火口湖と、五ノ池、亀(かめ)ヶ池などの火山堰止(せきとめ)湖がある。火山活動は大丹生岳に始まり順次南へ移り、剣ヶ峰をつくる一ノ池火山は7回もの溶岩を噴出している。岐阜県側からは平湯(ひらゆ)峠から乗鞍スカイラインが通じ、恵比須岳直下の畳平(たたみだいら)(2700メートル)に到達する。長野県側では、乗鞍高原から位ヶ原(くらいがはら)を経て畳平に至るエコーライン(県道84号)がある。ともにマイカー規制により一般車両は通行できない。摩利支天岳山頂には自然科学研究機構の乗鞍観測所などの学術施設がある。乗鞍岳は平安時代から山岳信仰の対象になり、山伏の修験(しゅげん)道場であった。乗鞍岳の別名を位山(くらいやま)というが、神の宿る岩座(いわくら)からきたものであろう。剣ヶ峰には長野県側に乗鞍権現、岐阜県側に御嶽神社が鎮座する。中央道松本インターチェンジから国道158号、県道84号で乗鞍高原へ約60分。乗鞍高原観光センターからシャトルバスで畳平まで約50分。
[小林寛義]
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