板垣郷(読み)いたがきごう

日本歴史地名大系 「板垣郷」の解説

板垣郷
いたがきごう

現甲府市東部に位置する。中世初頭に古代の表門うわと郷から分離・独立したと推定される。平安時代末から鎌倉時代初頭にかけて武田信義の子兼信(板垣三郎)がここに本拠を構え、板垣氏を称した(尊卑分脈)。兼信の居館跡は字殿屋敷とのやしき(現善光寺三丁目)の地と伝えられ(甲斐国志)、昭和六〇年(一九八五)から同六一年に実施された発掘調査では中世の所産と考えられる溝跡・掘立柱建物跡・墓壙などが検出されている。兼信以降の板垣氏の系譜は判然としないが、「太平記」巻三一や「一蓮寺過去帳」の延徳三年(一四九一)八月一六日供養の理春大姉、文亀二年(一五〇二)一二月一〇日供養の願阿弥陀仏の注記に板垣氏を確認することができ、元亀三年(一五七二)三月九日には板垣信安が菅田かんだ天神社(現塩山市)に板垣郷のうち五〇疋の地を永代寄進していることから(「板垣信安寄進状写」甲州古文書)、当郷に所領を有する板垣氏の命脈が中世を通じて存続していたものと思われる。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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