改訂新版 世界大百科事典 「林梅洞」の意味・わかりやすい解説
林梅洞 (はやしばいどう)
生没年:1643-66(寛永20-寛文6)
江戸前期の儒者。名は,字は孟著,通称は又三郎。林鵞峰(がほう)(羅山の三男)の長男として江戸に生まれる。幼時から穎才(えいさい)を現し,将来を嘱望されていたが,24歳で夭逝した。父の鵞峰は哀惜はなはだしく,《泣血余滴》という長文の追悼文を草した。著書に《梅洞全集》《史館茗話(めいわ)》などがある。梅洞は夭逝しなければ,官学の宗家たる林家(りんけ)の第3代を継ぐ立場にあったが,その詩文には朱子学の道学主義にとらわれない自由な感慨が述べられていて,叔父の林読耕斎とともに初期の林家一門の文学愛好の風潮をよく示している。《史館茗話》(1668刊)は平安鎌倉人士の風雅の逸話を集めた書で,後世の文人趣味と一脈通ずるものがある。
執筆者:日野 竜夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報