改訂新版 世界大百科事典 「栄養系」の意味・わかりやすい解説
栄養系 (えいようけい)
clone
普通の受精に頼らないで,無性生殖の形でたくさん作られる子孫のこと。分枝系,クローンともいう。このような繁殖のしかたを栄養繁殖という。細菌の一つの細胞や菌類の一つの胞子が細胞分裂を繰り返してできた細胞群を分枝系ということがあり,動物では無性生殖ということが多い。植物ではその種類によっていろいろの器官から栄養系を作ることができる。茎を利用するものにはジャガイモ,キクイモ(塊茎),グラジオラス,サトイモ(球茎),オニユリ,タマネギ(鱗茎),ミョウガ,フキ,タケ類(根茎。外見は根だが植物学上は茎),バラ類(接木,挿木)などや匍匐(ほふく)茎,肉芽,珠芽などがある。根を利用するものにはサツマイモ,ダリア(塊根),アヤメ,キク(宿根)などがある。葉を挿して利用するものにはベゴニア類その他がある。栄養系は無性生殖で増殖されるので,突然変異を起こさない限り個体それぞれがもつ遺伝質は均一である。このような栄養繁殖は植物では多年生に多く,林木についてもクローンといわれている。最近,細胞・組織培養技術を利用してクローンが作られ,品種改良に利用されると同時に,分子生物学の分野でもよく利用されるようになった。なお,植物では無性的に種子ができて繁殖することがあるが,これはアポミクシスapomixisといい,栄養系には含めないことが多い。
→クローン
執筆者:武田 元吉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報