歌舞伎(かぶき)、浄瑠璃(じょうるり)の登場人物名、またこれを扱った作品の通称。元禄(げんろく)(1688~1704)ごろの大坂で、丁稚(でっち)長吉を殺して金を奪い処刑された悪党梅渋吉兵衛(うめしぶきちべえ)がモデルだが、のち一般に侠気(きょうき)ある男達(おとこだて)として脚色。なかでも1736年(元文1)の『遊君鎧曽我(ゆうくんよろいそが)』で初世沢村宗十郎が演じた由兵衛の紫の錣頭巾(しころずきん)という扮装(ふんそう)は、型として伝わった。以後人形浄瑠璃に『茜染野中の隠井(あかねぞめのなかのこもりいど)』(1739)、歌舞伎に『男伊達初買曽我(おとこだてはつかいそが)』(1753)など多くの作が生まれたが、決定版は並木五瓶(ごへい)作、3世宗十郎初演の『隅田春妓女容性(すだのはるげいしゃかたぎ)』(1796)である。
[松井俊諭]
(上村以和於)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
…雁金五人男は1702年9月大坂岡本文弥座上演の人形浄瑠璃《雁金文七秋の霜》が最初で,《男作五雁金(おとこだていつつかりがね)》(1742年7月大坂竹本座,竹田出雲作)など多くの作を生んだ。また上方では黒船忠右衛門,梅の由兵衛など,歌舞伎・人形浄瑠璃に数々の俠客物が生まれたが,一方江戸でも,79年(安永8)7月肥前座所演の人形浄瑠璃《驪山(めぐろ)比翼塚》(源平藤橘ら作)以降の幡随院長兵衛の劇化,また1713年(正徳3)4月山村座《花館愛護桜(はなやかたあいごのさくら)》以降の十八番系の助六劇が盛行し,江戸っ子精神を代表する任俠としてもてはやされた。本朝丸綱五郎や朝比奈藤兵衛など実在しない俠客も創作され,77年5月中村座《本町育浮名花聟(ほんちようそだちうきなのはなむこ)》,1760年(宝暦10)7月竹本座《極彩色娘扇(ごくさいしきむすめおうぎ)》などの情話中の任俠として描かれている。…
…3幕8場。通称《梅の由兵衛》。並木五瓶作。…
…3幕8場。通称《梅の由兵衛》。並木五瓶作。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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