棒手振(読み)ぼてふり

精選版 日本国語大辞典 「棒手振」の意味・読み・例文・類語

ぼて‐ふり【棒手振】

〘名〙 (「ぼて」は、「はりぼて」の略の「ぼて」か。または、「ぼうてふり(棒手振)」の変化した語か) 品物をかついだりさげたりして、呼び声をたてて売り歩くこと。また、その人。江戸では、特に魚市場料理屋の間に介在して、魚の売買をした人をいった。振売り。ぼていふり。ぼてえふり。ぼてかつぎ。ぼてい。ぼて。
仮名草子・武蔵あふみ(写本)(1661)下「常はぼてふりと云あきなひをのみいとなみ」

ぼうて‐ふり【棒手振】

〘名〙 魚、青物などを天秤棒(てんびんぼう)でかついで、振売りすること。また、その商人。ふりうり。ぼてふり。
※俳諧・談林十百韻(1675)下「七歩うちにたつ鰯雲〈一鉄〉 棒手ふりそのままそこに卒中風〈一朝〉」

ぼてい‐ふり【棒手振】

〘名〙 「ぼてふり(棒手振)」の変化した語。
咄本・枝珊瑚珠(1690)二「彌五介とてほていふり、つねに芝肴うりて世をわたる」

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「棒手振」の解説

棒手振
ぼてふり

商品をもち運び,その名を連呼しながら路上で売る行商人。振売(ふりうり)のこと。「西鶴織留」にでてくる語。1609年(慶長14)以来,幕府は振売に手形(商札)を下付し,所持しない者の振売を禁じた。60年(万治3)には江戸市中の衣料品から食料品・嗜好品・日用品に至る振売を改め,新たに振売札を下付している。

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世界大百科事典(旧版)内の棒手振の言及

【裏店】より

…したがってこのような裏店が密集した地区の人口密度はかなり高かった。江戸の場合,地主が屋敷地内に住む(家持または居付地主と呼ばれた)ことは少なく,多くは家守(やもり)(大家,家主ともいう)が屋敷地内に住居を構え,地代・店賃徴収を代行し,また裏店住人の人別改め(戸籍調べ)や町触(法令)通達などを行い,棒手振(ぼてふり)などの小商人,大工・左官などの職人,そして日雇いなどと呼ばれた下層単純労働者など,裏店住人の事実上の支配者となっていた。長屋【玉井 哲雄】。…

【行商】より

…商品をもち歩き小売する商業,またその人(行商人)。市や商店の利用が未発達な時代や地方に行われてきた。
[日本]
 近距離間を往来する小規模な呼売,振売に対し,近江商人伊勢商人,富山の薬売,越後の毒消し売のような全国的に足跡をのこした大規模なものもあった。行商人をタベトと呼ぶ地方が日本海沿岸に多いのは,旅が交易を求める〈給(たま)え〉に由来することと関係があろう。生産事情を異にする地域,とくに沿海漁村と農・山村間の物資の交易は,行商発生の基本的要因である。…

【得意】より

…店商(みせあきない)や市商(いちあきない)の行われにくい場所では,かつて行商(ぎようしよう)が盛んに行われた。行商には,呼売や振売(ふりうり)など近まわりのものから,近江商人や富山の薬売のように全国的なものまであった。漁村では,獲れた鮮魚や貝・藻を近郊の農村などに売り歩く婦人の行商が,多くみられた。これらは,イタダキやボテフリ,オタタなどと呼ばれたが,それぞれ,売り歩く先に得意をもっていた。これらの得意先は,行商人によって固定している場合が多く,母から娘へ,あるいは姑から嫁へ引き継がれ,数代にわたってその関係を維持してきたものも多い。…

【長屋】より

…なかでも江戸,大坂など人口の密集した都市では,個々の町屋敷内の表通りに面していない裏側に建てられた〈裏長屋〉が数の上でも多かった。これは〈裏店(うらだな)〉とも呼ばれ,その住人は大工,左官,桶職などの職人や棒手振(ぼてふり)と呼ばれる天秤棒をかついで魚や野菜を売り歩く小商人,さらに鳶(とび)や其日稼(そのひかせぎ)の者と呼ばれた日雇など,さまざまな都市下層庶民であった。江戸の場合,裏長屋の1戸分は間口9尺~2間,奥行2間~2間半程度で,内部は畳部分に板の間と台所を兼ねた土間がつく1部屋の零細なものであった。…

【振売】より

…江戸時代には振売は商品を持ち歩いて売ることをいい,せり売とも触売(ふれうり)ともいった。棒手振(ぼてふり)も同義語である。1648年(慶安1)幕府は振売札を下付して札所有者にのみ振売を許し,さらに1659年(万治2)振売赦免の業種を定めて振売札を下した。…

※「棒手振」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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