中野重治(しげはる)の自伝的中編小説。1939年(昭和14)4~8月『革新』に連載。翌年新潮社刊。旧制高校の落第生主人公片口安吉は「ふたつの川と三つの丘とにまたがってぼんやりと眠っている体(てい)」の金沢の街で、「一面が営みであるなかで、おれには営みがない」と絶えず感じている。彼を慰めるのは歌の世界であるが、その歌の仲間鶴来(つるぎ)は学校を中退して上京、貯金局に勤める。やがて彼も大学に進学して上京する。関東大震災後のほこりっぽい大都会は彼の違和をいっそう激しくする。ある日大学構内でポスターを見て短歌会に出席するが、そこでの社交的な歌の扱われ方に反発を感じる。彼の詠草は最高点に入るが、その帰途、彼は短歌的なものと決別しようと決意する。
[満田郁夫]
『『歌のわかれ』(新潮文庫)』▽『満田郁夫著『増訂 中野重治論』(1981・八木書店)』
春になって暖かくなりかけた頃、急に寒さが戻って、地面などがまた凍りつく。《 季語・春 》[初出の実例]「七瀬御秡 同晦日也。〈略〉雪汁いてかへる」(出典:俳諧・誹諧初学抄(1641)初春)...