死刑台のエレベーター(読み)しけいだいのえれべーたー(その他表記)Ascenseur pour l'échafaud

日本大百科全書(ニッポニカ) 「死刑台のエレベーター」の意味・わかりやすい解説

死刑台のエレベーター
しけいだいのえれべーたー
Ascenseur pour l'échafaud

フランス映画。1957年作品。監督ルイ・マル。社長夫人(ジャンヌ・モロー)とその恋人(モーリス・ロネMaurice Ronet、1927―1983)が共謀して社長殺しを企てるも、予期せぬできごとがおこって完全犯罪が破綻(はたん)していくさまをサスペンスフルに描く。25歳のルイ・マルの単独長編監督デビュー作にして、フランスの映画賞ルイ・デリュック賞を受賞、新しい映画の到来を告げる一作となった。撮影はヌーベル・バーグカメラマンとして活躍することになるアンリ・ドゥカエHenri Decaë(1915―1987)が担当し、夜のロケーション撮影など、ざらついた質感のある画面作りで注目された。また、モダン・ジャズ・トランペッターのマイルス・デービスがラッシュ・フィルムを見ながら即興演奏したものを、音楽に使うという斬新な試みも話題になった。

[伊津野知多]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

デジタル大辞泉プラス 「死刑台のエレベーター」の解説

死刑台のエレベーター

①1957年製作のフランス映画。原題《Ascenseur pour l'échafaud》。ノエル・カレフ原作によるサスペンス映画の傑作エレベーターの故障というアクシデントのために、完全犯罪がほころびていくさまを描く。監督:ルイ・マル、出演:ジャンヌ・モロー、モーリス・ロネ、ジョルジュ・プージュリー、リノ・バンチュラほか。
②トランペット奏者、マイルス・デイヴィスの1957年録音のジャズ・アルバム。①のサウンドトラック。ツアーのため渡欧していたマイルスが、現地のミュージシャンらとともにパリで録音した作品。
③2010年公開の日本映画。①のリメイク。監督:緒方明、脚本:木田薫子、撮影:鍋島淳裕。出演:吉瀬美智子、阿部寛、玉山鉄二、北川景子、りょう津川雅彦柄本明ほか。第84回キネマ旬報ベストテン助演男優賞(柄本明)受賞。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の死刑台のエレベーターの言及

【ヌーベル・バーグ】より

…58年には14人,59年には22人の新人監督が長編映画の第1作を撮るという,かつてない激しい映画的波動がわき起こり,さらに60年には43人もの新人監督がデビュー,アメリカの雑誌《ライフ》が8ページの〈ヌーベル・バーグ〉特集を組むに至って,世界的な映画現象として認識されることになった。 こうしたフランス映画の若返りの背景には,国家単位で映画産業を保護育成する目的で第2次世界大戦後につくられたCNC(フランス中央映画庁)の助成金制度が新人監督育成に向かって適用されたという事情があるが,その傾向を促すもっとも大きな刺激になったのが,山師的なプロデューサー,ラウール・レビRaoul Lévy(1922‐66)の製作によるロジェ・バディムRoger Vadim(1928‐ )監督の処女作《素直な悪女》(1956)の世界的なヒット,自分の財産で完全な自由を得て企画・製作したルイ・マルLouis Malle(1932‐95)監督の処女作《死刑台のエレベーター》(1957)の成功,そしてジャン・ピエール・メルビル監督の《海の沈黙》(1948)とアニェス・バルダ監督の《ラ・ポワント・クールト》(1955)の例にならった〈カイエ・デュ・シネマ派〉の自主製作映画の成功――クロード・シャブロルClaude Chabrol(1930‐ )監督の処女作《美しきセルジュ》(1958),フランソワ・トリュフォー監督の長編第1作《大人は判ってくれない》(1959),ジャン・リュック・ゴダール監督の長編第1作《勝手にしやがれ》(1959)――であった。スターを使い,撮影所にセットを組んで撮られた従来の映画の1/5の製作費でつくられたスターなし,オール・ロケの新人監督の作品が次々にヒットし,外国にも売れたのであった。…

※「死刑台のエレベーター」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android