気候景観(読み)きこうけいかん

改訂新版 世界大百科事典 「気候景観」の意味・わかりやすい解説

気候景観 (きこうけいかん)

ある場所の気候環境を,直接あるいは間接的に反映している景観を総称していう。気候景観を内容から区別すると,自然景観的な気候景観と人文景観的な気候景観に分けることができる。前者は,特に気候の作用が自然景観の形成に重要な役割を果たしている場合である。なかでも植生景観は,気候・土壌などのいわゆる自然界の特性に依存し,その外形上の特徴が地域性をよく反映している。すなわち,地理的現象の原因・結果の関係が,植生景観を媒介にしてよく説明することができる。したがって,植生景観を分析することにより,気候の特性を明らかにすることができる。この点から考えるとW.P.ケッペンやC.W.ソーンスウェートの気候区分は,大スケールの植生分布をうまく表現できるように考案されており,自然景観的な気候景観の概念による気候区分といえよう。

 一方,人文景観的な気候景観は,人間活動と環境要素としての気候との間の依存性により作り出されたものである。例えば,民家の位置・形態・構造などの集落景観や,防風林・防砂林・防霧林の分布,水田のぬるめなどの耕作景観がある。人文景観と気候環境の媒介物は本来人間活動という人為的なものであるため,しばしば気候の影響を全く受けない景観が形成される場合もある。すなわち,建設技術や耕作技術の改良発達や,人間活動の質の変化などによって景観そのものが独自に変化する。このことから,自然景観的気候景観と比較すると,間接的に気候を表現すると考えられる。

 このように気候景観は,環境としての気候を知るうえに重要である。これは定性的のみならず,例えば防風林の密度樹木の偏形の度合などにより,ある程度定量的な取扱いも可能である。特に局地的な環境の差異を把握する場合,測器による長年観測が不可能なので,気候景観を利用して局地性を把握することができる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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