国指定史跡ガイド 「水池土器製作遺跡」の解説
みずいけどきせいさくいせき【水池土器製作遺跡】
三重県多気郡明和町明星にある土器製作集落跡。伊勢平野の南部、松阪市と伊勢市のほぼ中間にある北に延びた高低差約10mの段丘の一端に位置する。奈良時代の工人集団の遺跡で、西方約2kmには斎宮(さいくう)跡がある。発掘調査の結果、高低差約3m、幅約100m、長さ約200mの傾斜のゆるい場所に、掘立柱建物跡4棟、竪穴(たてあな)住居跡3棟、土器焼成坑16基、土坑11ヵ所、粘土溜(だま)り2ヵ所、井戸跡1、溝1条などが見つかった。土器焼成坑はほぼ二等辺三角形で、長さ2.6~4.2m、幅1.2~1.8m、深さ0.2~0.4mの地山を掘っただけの簡単な構造で、壁面や床面は赤く焼けており、炭や灰の交じった土中には多量の土師器(はじき)片があった。掘立柱建物跡と竪穴住居跡は通常の集落跡で発見されるものと差はないが、焼成坑以外からは多量の土師器のほか少量の須恵器(すえき)が発見されている。これらの土器の年代は奈良時代前半期のものだが、溝からは灰釉(かいゆう)陶器も出土している。遺構は溝で区画されたなかに建物を中心として焼成坑が配され、井戸もあって、生産関係の遺跡として一つのまとまりを示しており、わが国の土器製作遺跡としてその製作の実態をうかがわせる重要な遺跡であることから、1977年(昭和52)に国の史跡に指定された。現在、一帯は水池史跡公園になっている。近鉄山田線明星駅から徒歩約10分。