マルクス主義およびマルクス経済学に特有の基本概念である。広義の生産関係は社会的生産力を構成する個々の契機の社会的相互関係であり,生産物市場,労働市場,金融市場などにおける現実的諸関係を含むが,それらはすべて生産における人間相互の関係によって根本的に規定されているから,生産関係の基軸は生産手段に対する人間の関係,すなわち生産手段の所有関係であるとされる。さらに,歴史的に実在する生産関係は原始共同体,奴隷制,封建制,資本主義,社会主義の五つであり,資本主義社会は生産手段の所有者(資本家,土地所有者)階級が生産手段をもたない直接生産者(賃金労働者)階級を支配し,社会的生産の直接的担い手である労働者が資本家階級のために剰余価値を生産する,いわゆる階級社会,それも最後の階級社会であると説かれる。一定の発展段階に達した社会的生産力とそれに対応する生産関係の統一が生産様式であり,人類社会の発展は生産様式の変化,発展によって規定される。
生産力は,その発展水準に対応する生産関係のもとではじめて現実の生産力として作用し,発展する。生産関係もまた生産力の発展とともに進化する。しかし両者の進行は均等ではない。一定の生産関係における生産力の発展は,やがて生産関係(生産手段の既存の所有関係)の枠を突き破るまで進み,もはや既存の生産関係は生産力の発展に対応しえず,それを阻害する桎梏(しつこく)と化す。古い生産関係は破壊され,発展した生産力に相応する新たな生産関係が形成される。これが社会革命の時期であり,原始共同体以後の生産関係の歴史的転化,発展を説明する。このようにマルクス主義にあっては,歴史的発展の契機となる〈生産力と生産関係の矛盾〉についての理解が,階級および階級闘争規定,社会革命の必然性,資本主義の社会主義への転化などを理解するうえで欠かせないものとなっている。
執筆者:木村 一朗
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