水酸化亜鉛 (すいさんかあえん)
zinc hydroxide
化学式Zn(OH)2。酸化亜鉛ZnOを水に懸濁し,これに水酸化物イオンを加えて沸騰させ60℃に冷却後,ろ過してうすめた後放置すると,Zn(OH)2が得られる。これはε型Zn(OH)2であるが,ほかにα,β,γ型などの変態が知られている。ε型は斜方晶系結晶で,亜鉛のまわりには4個のOHが正四面体となってとり囲み,またOHのまわりは2個の亜鉛と2個のOHが存在する巨大分子構造となっている。原子間距離Zn-O=1.94~1.96Å。一般にはZn2⁺水溶液にアルカリを加えるとZn(OH)2が沈殿してくるが,このときの温度,pH,濃度によって種々の結晶が得られる。α型は六方晶系,ヨウ化カドミウム型構造。β1,β2型は層状構造。γ型は斜方晶系であるが,詳しいことはわかっていない。ε型のみが39℃以下の水中で安定な相である。固体は120℃で水を失いはじめ,900℃で完全にZnOとなる。比重3.053。Zn(OH)2の溶解度は測定者によっていろいろ異なる値が報告されているが,これは多くの結晶系があること,また他のイオンが微量にあっても影響することによると思われる。溶液のpHが高くなると溶解度が増大するが,これは[Zn(OH)3],[Zn(OH)4]⁻が生成するためである。
執筆者:水町 邦彦
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水酸化亜鉛
すいさんかあえん
zinc hydroxide
亜鉛の水酸化物。化学式Zn(OH)2、式量99.4。亜鉛塩の水溶液に水酸化アルカリを加えると白色の沈殿として得られる。加熱すれば125℃で酸化亜鉛となる。両性水酸化物で酸に溶けて亜鉛塩、アルカリに溶けて亜鉛酸塩となる。
Zn(OH)2+H2SO4→ZnSO4+2H2O
Zn(OH)2+2NaOH→Na2[Zn(OH)4]
亜鉛酸イオンは普通ZnO22-と書くが、実は[Zn(OH)4]2-または[Zn(OH)4(H2O)2]2-などである。アンモニア水に溶けて錯イオン[Zn(NH3)4]2+になる。
[中原勝儼]
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水酸化亜鉛
スイサンカアエン
zinc hydroxide
Zn(OH)2(99.41).亜鉛酸水溶液に水酸化アルカリを加えると,白色の沈殿として得られる.α,β,γ,δ,ε形の5種類の変態があり,結晶として得られるのはε形で斜方晶系である.密度3.05 g cm-3.結晶構造はOHを共有するZn(OH)4の四面体の連なりからなっている.125 ℃ で分解して酸化亜鉛となる.両性で,酸にもアルカリにも溶け,亜鉛酸および亜鉛酸基をつくる.水にほとんど不溶.ゴムの配合剤,外科用包帯,酸化亜鉛などの製造に用いられる.[CAS 20427-58-1]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
水酸化亜鉛
すいさんかあえん
zinc hydroxide
化学式 Zn(OH)2 。亜鉛を含む溶液に水酸化アルカリを加えると白色ゼラチン状の沈殿として得られる。水に難溶。両性で過剰の酸,アルカリに溶解する。 125℃で分解し,酸化亜鉛となる。
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水酸化亜鉛【すいさんかあえん】
化学式はZn(OH)2。比重3.053。水に難溶の無色粉末。両性で,酸にもアルカリにも可溶。亜鉛塩の水溶液に苛性アルカリを加えるとコロイド状沈殿として生成する。
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