江島生島物(読み)えじまいくしまもの

改訂新版 世界大百科事典 「江島生島物」の意味・わかりやすい解説

江島生島物 (えじまいくしまもの)

歌舞伎狂言の一系統。江戸城の奥女中江(絵)島と歌舞伎役者生島新五郎の情話に取材したもの。この江島事件は1714年(正徳4),大年寄(おおどしより)江島山村座の役者新五郎となじみを重ねたことが発覚,江島は信州高遠に,生島三宅島流罪,関係者1000余名が処分され,山村座は廃絶になったというもの。徳川家に関連する不祥事として江戸時代には脚色が許されなかったが,維新後は1870年(明治3)河竹黙阿弥の《宝萊曾我島物語》に扱われたのをはじめ劇化も多くなった。おもな作は勝諺蔵の《江戸紫徳川源氏》(1881年9月大阪中座),3世河竹新七の《浪乗船江島新語(えのしましんご)》(1883年1月東京春木座),右田寅彦の《江島生島》(1916年9月東京帝国劇場),正宗白鳥の《江島生島》(1953年11月東京一ツ橋講堂,後に《夢の高遠》と改題)など。有名なのは長谷川時雨作の舞踊劇《江島生島》(1913年11月東京歌舞伎座の舞踊研究会)で,三宅島に流された新五郎が夢に江島との歓楽を見,さめれば旅商人や江島に似た海女にからんで狂乱になるという筋。新舞踊の代表作として今日も流行している。また,舟橋聖一自作小説みずから脚色した《絵島生島》があり,1954年3月から3回にわたり,いずれも東京歌舞伎座で尾上菊五郎劇団によって上演された。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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