江戸っ子1号(読み)えどっこいちごう(英語表記)Edokko 1

日本大百科全書(ニッポニカ) 「江戸っ子1号」の意味・わかりやすい解説

江戸っ子1号
えどっこいちごう
Edokko 1

東京下町の中小企業などが共同開発したフリーフォール(自由落下)型の無人深海探査機。海面から深海底まで沈降し、深海探査や資源採取などにあたる。杉野ゴム化学工業所(東京都葛飾(かつしか)区)の社長杉野行雄(ゆきお)(1949― )が2009年(平成21)に発案。東大阪市の中小企業が打上げに成功した人工衛星「まいど1号」に触発され、東京周辺の町工場の技術を結集して不況に打ち勝つ革新的技術を生み出そうと、江戸っ子心意気を表す意味で、「江戸っ子1号」と命名した。杉野ゴム化学工業所、浜野製作所(東京都墨田(すみだ)区)、バキュームモールド工業(東京都墨田区)、パール技研(千葉県船橋(ふなばし)市)、ツクモ電子工業(東京都大田(おおた)区)、岡本硝子(ガラス)(千葉県柏(かしわ)市)の中小企業6社、海洋研究開発機構(JAMSTEC(ジャムステック))、東京海洋大学と芝浦(しばうら)工業大学の2大学、地元の東京東信用金庫(東京都墨田区)が連携し、2011年から開発プロジェクトが始まった。2013年には水深約8000メートルの日本海溝で深海魚や海底などの動画撮影に世界で初めて成功。2015年からは岡本硝子を中心に事業化へ移行し、JAMSTECに探査機を4機納入した。マリアナ海溝の世界最深部や熱水鉱床など腐食性の高い深海域での探査を目ざしている。

 当初の計画では、海底1万1000メートルの潜水能力をもち、海底をタイヤで移動する探査ロボットの開発を目ざした。しかし予算的制約から海中落下・浮上回収型に転換した。「江戸っ子1号」の基本構造は800気圧に耐えられるガラス球を複数個(3~4個)つなぎ、ガラス球内に三次元ビデオカメラ、照明器具、通信機器などを搭載。おもりの重さで潜水し、深海での作業を終えると、おもりを切り離して浮上、海上回収する仕組みである。通常、深海探査には100億円以上の予算が必要とされるが、「江戸っ子1号」は開発費約2000万円、1回の探査費は数百万円ですみ、安価で簡単に深海での探査ができる特長をもつ。

[矢野 武 2016年10月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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