照明器具(読み)しょうめいきぐ(英語表記)luminaire

日本大百科全書(ニッポニカ) 「照明器具」の意味・わかりやすい解説

照明器具
しょうめいきぐ
luminaire

主として光源の配光を変える機能をもち、光源を固定したり、保護したりする器具。大別して、一般照明用器具と舞台・スタジオ照明用器具に分けられる。

[高橋貞雄]

一般照明用器具

一般照明用器具は、内蔵される光源の種類により電球(白熱灯)器具、蛍光灯器具、およびHID器具(HIDはhigh intensity dischargeの略、高輝度放電)に分けられたり、使用場所により屋内用照明器具と屋外用照明器具、用途により住宅用照明器具、施設用照明器具、投光器街路灯防犯灯、道路灯、防災照明器具、防爆照明器具などに分けられたりする。光源に蛍光ランプHIDランプを用いる場合には、点灯に必要な安定器なども器具に含まれる。

 照明器具の選定にあたっては、所要の明るさ分布と雰囲気が得られるように配光特性と光色、演色性および意匠が重視される。

 配光特性は厳密には配光曲線によって表されるが、概略的には照明器具を所定の姿勢で点灯したときの、照明器具の全光束に対する下方に向かう光束あるいは上方に向かう光束との比で表される。

(1)直接照明形(下方光束比が90~100%) 埋込みダウンライトや反射笠(がさ)、埋込み形の蛍光灯器具がこれに含まれる。

(2)間接照明形(上方光束比が90~100%) 主として上方にのみ光を発散するブラケットや床置き形の間接照明器具がこれに含まれる。

(3)中間形 直接照明形と間接照明形の中間形で、通常、半直接照明形(下方光束比60~90%)、全般拡散照明形(下方光束比40~60%、上方光束比60~40%)および半間接照明形(上方光束比60~90%)に細分される。蛍光灯のペンダント、ガラスグローブなどのペンダントやブラケットなどがこれに含まれる。

 照明器具の光色と演色性は、内蔵されるランプの色温度と演色性に依存する。暖かい感じは、色温度3300K未満の白熱電球ハロゲン電球、電球色蛍光ランプおよび高圧ナトリウムランプで得られる。また、涼しい感じは、5300K以上の昼光色蛍光ランプやメタルハライドランプで得られる。暖かい感じと涼しい感じの中間は、3300~5300Kの昼白色蛍光ランプ、白色蛍光ランプ、水銀ランプおよびメタルハライドランプで得られる。照明器具の演色性については、色の正確な見え方が必要な色検査場や美術館などではとくにたいせつで、住宅やオフィスのような長時間いる所もまた高い演色性が望まれる。

 照明器具の意匠は、その空間の雰囲気づくりや美観からすべての応用分野で重視されるが、なかでも住宅用照明器具には和風と洋風の意匠がある。それらはインテリアの微妙なイメージにあうように、伝統和風や現代和風あるいは洋風のモダン調やロマン調などに細分される。屋内の施設用照明器具では、オフィスや工場、店舗、学校などに使用される蛍光灯器具がおもなものである。これらの蛍光灯器具では、不快グレア(不快感を生じるまぶしさ)を与えないように、またコンピュータの画面に映り込まないように、鉛直下方を0度として測った鉛直角60~90度範囲の輝度が規定値以下に制限されている。このことは、最近の蛍光ランプが従来よりもランプ効率が向上し管径が細く高輝度化しているのでいっそう重要になり、器具の開口面に鏡面性あるいは拡散性のルーバーlouver(ルーバともいう。グレアを防止するための格子状の遮光板)などが設けられ、グレアの原因になる輝度が下げられている。「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(略称「省エネ法」)で定められた施設用および家庭用の蛍光灯器具は、カタログなどにその総合効率(ランプ全光束を入力電力で割った値)を記載するよう定められている。

 屋外用の照明器具には、道路灯、トンネル照明器具、防犯灯、街路灯、公園・広場灯、投光器などがあり、たいていは防水構造になっており、道路、公園、広場、構内、駐車場、グラウンド、スポーツ施設などに使用される。光源としてはHIDランプが多いが、蛍光ランプも使用される。近年では長寿命の無電極ランプが保守作業の困難な橋などの照明に用いられる。1998年(平成10)完成の明石(あかし)海峡大橋のケーブルのイルミネーションには、寿命4万時間の無電極蛍光ランプが使用されている。なお、最近の傾向として、上空に光を出さない光害(ひかりがい)防止形の照明器具が増えている。

 前記のような一般の照明器具のほかに、次のようなものがある。

(1)防災照明器具 室内誘導灯(避難口誘導灯と通路誘導灯の2種)と非常時用照明器具がこれに含まれる。これらの使用にあたっては、消防法施行令や建築基準法に定めがある。

(2)防爆照明器具 可燃性ガスや爆発性ガスが発生するおそれのある場所、可燃性粉体を扱っている場所などに使用するように定められている。

[高橋貞雄]

舞台・スタジオ照明用器具

舞台・スタジオ照明用器具には、具体的な照明効果が演出できるように次のようなものがある。

(1)ボーダーライト 舞台上部に吊(つ)り下げ、舞台全体に一様な照明を与える。

(2)フットライト 舞台最前部の床面に設置して下部から一様な照明を与える。

(3)フラッドライト 光景全域にくまなく一様な照明を与える。

(4)レンズスポットライト レンズのついた投光器。

(5)プロフィールスポットライト 絞りなどで輪郭を変えることのできる投光器。

(6)エフェクトプロジェクター 大口径高出力の投光器。

(7)ソフトライト 明暗の境界がはっきりしない拡散照明を与える。

(8)ホリゾントライト 平らな面を照明する照明器具。上からと下から照明するものがあり、青などの色光もできる。

[高橋貞雄]

『伊藤安雄著、日本映画テレビ技術協会編『映像ライティング 画面づくりの第一歩』再版(1983・日本映画テレビ技術協会)』『大山松次郎原著、小原清成編『新しい照明ノート』(1996・オーム社)』『照明学会編『大学課程 照明工学』新版(1997・オーム社)』『『JIS C 8106-1999 施設用蛍光灯器具』(1999・日本規格協会)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

リフォーム用語集 「照明器具」の解説

照明器具

基本的にはシーリングライト(天井直付型・天井埋込型)、コードペンダント(天井からのコード吊り下げ型)、ブラケット(壁付型・補助照明)、ダウンライト(天井埋込型の小型照明器具)などの種類があり、用途や部屋の広さ・形状、利用者の年齢層などに応じて組み合わせて利用する。

出典 リフォーム ホームプロリフォーム用語集について 情報

家とインテリアの用語がわかる辞典 「照明器具」の解説

しょうめいきぐ【照明器具】

電気を用いた光で設置された空間を明るく照らし、配光・光色・光量を調節する器具。光源を保護する機能も持つ。電気配線に必要な付属装置も含まれる。直(じか)付け型・吊り下げ型・埋め込み型などがある。

出典 講談社家とインテリアの用語がわかる辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の照明器具の言及

【照明】より

…それは室内各面で光束が反射されるからである。照明器具から出た光は天井や壁,床などで反射されるので,実際に作業面(照明設計で仮想する面で床面上85cmの水平面,日本間では畳上40cmの水平面)に達する光束は,照明器具からの全光束とは相違している。照明器具からの全光束に対する作業面上の光束の比を〈照明率〉という。…

【舞台照明】より

…劇場の規模に見合った容量を確保する。(2)負荷回路 照明器具を点灯するための配線で,回路数が多いほど水準の高い照明が計画できる。(3)調光装置 照明をコントロールする心臓部であり,舞台を見ながら操作する部屋を調光室という。…

※「照明器具」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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