日本大百科全書(ニッポニカ) 「江戸城総攻」の意味・わかりやすい解説
江戸城総攻
えどじょうそうぜめ
真山青果(まやませいか)作の史劇。三部作。初編『江戸城総攻』1幕2場は1926年(大正15)11月歌舞伎(かぶき)座で、中編『慶喜命乞(よしのぶいのちごい)』1幕は33年(昭和8)11月東劇で、終編『将軍江戸を去る』3幕4場は翌34年1月東劇で、2世市川左団次、市川猿之助(猿翁)、市川寿美蔵(すみぞう)(寿海)らにより初演。1868年(慶応4)、江戸城を攻略する官軍の西郷吉之助と、誠を尽くして将軍慶喜の助命を願う勝麟太郎(りんたろう)、山岡鉄太郎らの対立、苦悩、和解と、慶喜が平穏に江戸城を明け渡して江戸を去るまでを描く。激動する歴史の転換期に生きる人物像を、切迫した劇的状況と性格対比のうちにとらえ、白熱した対話によって鋭く描いた、青果史劇の代表作。
[藤木宏幸]
『『真山青果全集7』(1975・講談社)』