一般的に朝廷側の軍隊の意だが,狭義には戊辰戦争時の新政府側軍隊を指す。幕府側は〈賊軍〉とされた。1868年(明治1)鳥羽・伏見の戦後,征討大将軍に嘉彰親王が任命され,各地に鎮撫使が派遣された。さらに2月,東征大総督府が置かれ,大総督に有栖川宮熾仁(たるひと)親王が任命され,諸道総督府が設置された。ここに官軍は菊章旗(錦の御旗)を得,指揮体系もととのった。諸道総督府は,広範な軍令・軍政の権限を持ち,薩摩藩や長州藩などの実力者が参謀として加わり,戦局を指導した。軍隊は,新政府側諸藩兵と草莽諸隊で構成され,諸藩連合軍の性格も残していた。草莽諸隊に,北越草莽諸隊や赤報隊など多数があるが,大総督府は,早くからこれらの統制につとめ,ときには赤報隊のように偽官軍として弾圧した例もある。戦地の民政に,北陸や東北で民政局を各所に置き,窮民保護を宣伝し,年貢半減令を出した地域もあり,成果を収めたが,一方,百姓一揆を武力で押さえた例もある。
執筆者:井上 勝生
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