日本大百科全書(ニッポニカ) 「決済専門銀行」の意味・わかりやすい解説
決済専門銀行
けっさいせんもんぎんこう
settlement bank
コンビニエンス・ストアやスーパーマーケットなどにATM(現金自動預金支払機)を設けて、預金の出し入れ、振込み、ショッピングの支払いなど決済サービスだけを提供する銀行。銀行の本来業務である貸出しをせずに信用創造しないためナローバンク(narrow bank)ともよばれる。日本では異業種の銀行業への参入容認を受け、流通業大手のイトーヨーカ堂が2001年(平成13)4月にアイワイバンク銀行(現セブン銀行)を設立。その後、コンビニATMという形で普及した。
決済専門銀行は、もともと1920年代の世界恐慌時に、シカゴ大学の経済学者グループが提唱した決済業務のみの「純粋銀行」構想が原型。個人や企業への融資業務を実施せず、不良債権を抱えないことから破綻(はたん)するおそれがないため、日本でもバブル経済が崩壊し金融システム不安が高まった1990年代後半から注目されるようになった。
決済業務のみで、預金は安全性の高い国債などで運用し、ATMなどの手数料と国債運用益を主たる収益源とする。コンビニエンス・ストアは銀行の支店などより店舗数が多く、24時間ATMを使えるため、利便性が高い。日本のほか、アメリカやイギリスでもスーパーマーケットなど小売店内にATMを設置する形で普及している。
2008年の世界金融危機に際し、内外の多くの銀行が赤字や減益に陥ったが、融資をせず手数料収入に頼るセブン銀行などの決済専門銀行は危機の影響が小さく、業績も堅調であった。
[矢野 武]