不良債権(読み)フリョウサイケン(その他表記)bad loans

精選版 日本国語大辞典 「不良債権」の意味・読み・例文・類語

ふりょう‐さいけんフリャウ‥【不良債権】

  1. 〘 名詞 〙 金融機関の貸出債権のうち、融資先の倒産などで返済が滞っている債権。〔現代日本技術史概説(1956)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「不良債権」の意味・わかりやすい解説

不良債権
ふりょうさいけん
bad loans
bad debt
non-performing loans

銀行などの金融機関が融資した元本利子が返済されない、あるいは返ってくる見込みのほとんどない債権のこと。バブル経済崩壊後の長引く不況や地価下落で、民間金融機関の不良債権額は累計で100兆円を大きく上回る額に膨らんだ。このため不良債権処理は日本経済が「失われた十年」から抜け出すための最重要課題とされ、2002年(平成14)、小泉純一郎政権は不良債権を2005年3月末までに半減させる目標を掲げ、バブル崩壊後の長引く不況から脱却する道筋をつけた。

 不良債権の分類には、返済状況を重視する「リスク管理債権」、借り手の財務状況を基準とする「再生法開示債権」、借り手が返済できるかどうかを金融機関自身が査定する「自己査定分類債権」の三つがある。自己査定分類債権で不良債権予備軍といわれる要注意先債権まで含めた広義の不良債権額(問題債権)は一時150兆円程度に達したこともあり、不良債権の実態を知るうえで、自己査定分類債権を重視する傾向がある。

 不良債権の処理には、企業の倒産などに備えて貸倒引当金を積む「間接償却」と、債権を帳簿から消し去る「最終処理」(不良債権のオフバランス化)の二つがある。バブル崩壊後、日本の金融機関は間接償却に力を入れたが、地価下落による担保価値の低下や融資先企業の倒産で不良債権を処理しても次々に発生するいたちごっこに陥っていた。このため小泉政権は総合デフレ対策の一環として2002年10月に金融再生プログラムを策定。必要に応じて公的資金を注入しながら、(1)融資先を会社更生法などで法的に整理して不良債権を直接償却する、(2)融資先の借金を棒引きする、(3)不良債権を産業再生機構整理回収機構など第三者へ売却する、といった三種類の手法による最終処理を促した。

 2008年からの世界金融危機で、日本の金融機関はふたたび不良債権の増大に直面。とくに地方銀行以下の地域金融機関が不良債権問題を抱えている場合が多く、政府は金融機能強化法を改正するなどして、公的資金注入も選択肢としながら、不良債権処理と再編による金融機関の体質強化に取り組んでいる。

[矢野 武]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「不良債権」の意味・わかりやすい解説

不良債権
ふりょうさいけん

銀行が企業に貸し出した融資 (債権) のうち,元本や利子の契約どおりの回収が不能あるいは困難な状態に陥ったもの。銀行法では,(1) 破綻先債権,(2) (元本・利子の支払いが6ヵ月以上遅れる) 延滞債権,(3) 3ヵ月以上延滞債権,(4) 貸出条件緩和債権,を「リスク管理債権」と定義する。一方,金融機能の再生のための緊急措置に関する法律 (金融再生法) は「開示債権」 (不良債権) を,(1) 破綻更生債権,(2) 危険債権,(3) 要管理債権,に3分類する。全国銀行が 2002年9月期に発表した不良債権総額は,リスク管理債権に基づくと 39兆 2250億円,開示債権基準では 40兆 850億円に達した。不良債権処理の方法には,法的整理や債権放棄による直接償却 (最終処理) と,貸し倒れに備え引当金を積む間接償却がある。バブル経済崩壊に伴う地価下落で担保価値が暴落し,銀行が抱える不良債権がふくらんだ。不良債権問題の解決が日本経済再生の鍵を握るといわれてきたが,最終処理には貸出先企業の倒産・失業といった痛みを伴うおそれもあり,難航した。また金融機関の自己査定の甘さも批判された。

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会計用語キーワード辞典 「不良債権」の解説

不良債権

回収可能性がかなり低い債権のことを不良債権といいます。債券の中でも、貸倒懸念債券及び破産構更生債券がこれに当たります。簡単にいうと経営破綻まではいっていないが、債務の弁済がかなり難しい債務者や債務者が経営破たんもしくは実質的に経営破たんしている場合の債務者に対する債券です

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