日本大百科全書(ニッポニカ) 「汽力発電」の意味・わかりやすい解説
汽力発電
きりょくはつでん
蒸気タービンを原動機に用いた火力発電のことで、一般的には火力発電と同じと考えてよい。構造としてはボイラー、蒸気タービン、発電機などで構成される。ボイラーで石炭、重油・原油、天然ガスなどの燃料を燃焼させ、水を高温・高圧の蒸気に変える。発生した高温・高圧の蒸気で蒸気タービンを回転させ、蒸気タービンに直結した発電機によって電気を発生させる。石炭火力発電は日本、とくに大都市圏では、環境対策上一時敬遠されていた(東京電力の1998年の火力発電に占める燃料の割合は、液化天然ガス68%、石油26%、石炭6%)。しかし、日本の環境対策技術である脱硫・脱硝技術(硫黄酸化物や窒素酸化物を除去すること)の進歩、粉塵(ふんじん)(ダスト)の電気集塵の進歩により、十分な対策がとれるようになった。さらに石炭埋蔵量が豊富で供給が安定していることから、石炭がまた見直されてきている。世界的にみればアメリカ、ドイツ、イギリスそして中国も石炭による旧式な汽力発電が電力の中心であるが、熱効率や環境対策は十分ではないといえる。なお、発電効率の向上を目的にガスタービン発電と排熱回収ボイラーを組み合わせた複合サイクル発電(コンバインドサイクル発電、アドバンストコンバインドサイクルAdvanced Combined Cycle発電=ACC発電)が建設されている。これはガスタービン発電と汽力発電との複合である。
[嶋田隆一]