日本大百科全書(ニッポニカ) 「法定準備預金」の意味・わかりやすい解説
法定準備預金
ほうていじゅんびよきん
日本では、1957年(昭和32)制定の「準備預金制度に関する法律」(昭和32年法律第135号)に基づいて、市中銀行等は「受け入れている預金等の一定比率以上の金額を日本銀行に預け入れること」を義務づけられており、その最低金額を「法定準備預金額」(または「所要準備額」)という。ここで市中銀行等とは銀行(銀行法によるものをいい、在日外国銀行を含む)、信用金庫(預金残高1600億円超の信用金庫のみ)、農林中央金庫をさす。
市中銀行等は、企業や家計等から預金等を受け入れ、それを原資として貸出等を行うことで信用創造を行う。その際、預金等の流動性(預金者がいつでも引き下ろして現金にかえること)を確保するために、受け入れた預金等の一定割合(これを「準備率」という)を日銀当座預金または準備預り金として日本銀行に預け入れている。この日銀当座預金等は原則利子がつかないことから、通常の経済下において市中銀行等は、受け入れた預金をできる限り多く貸出等の資金運用に回したいと考える。その場合、仮に法律による規制がなければ、預金等の流動性に必要となる準備率に満たない日銀当座預金等しかもたない市中銀行等が現れる可能性がある。そこで、「受け入れている預金等の一定比率以上の金額を日本銀行に預け入れること」が義務づけられている。この制度のことを準備預金制度という。なお、準備率は1991年(平成3)10月を最後に変更されていない。
[前田拓生 2016年9月16日]