法律相談(読み)ほうりつそうだん

改訂新版 世界大百科事典 「法律相談」の意味・わかりやすい解説

法律相談 (ほうりつそうだん)

弁護士,行政職員その他法的な知識または経験を有する者が一般市民,消費者,一定類型の不法行為の被害者などに対して無料または有料(多くは低廉)で法的教示(助言)など(ときには文書作成,和解交渉)の法的サービスを提供する活動をいう。これらのうち,個々の弁護士が法律業務の一環として行う法律相談を除いて,こうよぶことが多い。大学法学部,宗教団体などによる困窮者救済の活動(たとえば,東京帝大のセツルメント)として大正時代に盛んになったが,近時,地方公共団体や弁護士会などによる組織的プログラムが各地に発足して,法律相談は著しい盛況を呈している。欧米諸国においても法律相談はある程度普及しているが,日本の状況は,個々の開業弁護士による有料の法的助言があまり活発でないのと対比して,きわめて特徴的である。法律相談は大局的には,弁護士が少なく市民にとって近づきにくいという弁護士業務の問題点を補完する役割を果たしているのであって,今後,弁護士業務の改善,たとえば,弁護士報酬の明確化,法律業務の内容の周知徹底,市民弁護の専門分化を通じて,法律業務としての法律相談を受けやすい状況をととのえていく必要がある。

 法律相談のなかにも多様な形態がみられ,それぞれ独自の役割を果たしている。地方自治体による法律相談は一般市民に対し無料で法的教示を中立的な立場から行っており,設営者である行政への信頼もあって相当の実績をあげている。弁護士会のそれには,有料のものと無料のものがあり,なかには百貨店に進出するなど積極的な方針をとっているものもある。交通事故やサラリーマン金融の被害などを対象とする専門化した法律相談は,社会問題化した事件類型と積極的に取り組もうとする弁護士会の姿勢を示すものである。無資力者に対する法的援助を目的とする法律扶助協会も無料の法律相談を行っている。大学法学部や消費者団体,労働組合などの法律相談では,弁護士資格を有しない学生や法律事務未経験者が関与する例があるが,無料であれば,非弁活動の禁止(弁護士でない者は報酬を得る目的で反復して法律事務を取り扱い,またはその周旋を業とすることができないという原則。弁護士法72条)に抵触しない。法律相談が盛況で実績をあげている背後には,訴訟よりも話合いによる解決を求める市民心理や調停などのインフォーマルな紛争解決制度の充実があることも見のがせない。
法律扶助
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android