貸金業者によって行われる使途の自由な小口現金貸出しの一種。勤務先の身分証明書,健康保険証,自動車の運転免許証,学生証などの提示によって借手の人物を確認し,無担保,無保証で主としてサラリーマンや労働者,主婦,学生などに即座に数万~数十万円程度,あるいはそれ以上の現金を通常半月~2年程度の期間で貸し出し,主として割賦で返済させる金融である。略してサラ金ともいう。〈サラリーマン金融〉という言葉は,1965年ころからマスコミによって使われだしたが(それ以前は類似のものとして高利貸という呼名が一般的だった),1960年ころ始まった団地族を主対象とする〈団地金融〉がその始まりといわれる。借入目的は生活資金の補充や不時の支出,教育費,医療費の緊急の調達から,旅行,遊興,レジャー,ギャンブル資金など広範である。サラリーマン金融の特色としては,(1)簡単に手軽にその場ですぐ借りられる利便性,(2)高金利,(3)厳しい取立て,があげられる。ただ,83年に〈貸金業の規制等に関する法律〉と〈出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)〉の一部改正法からなるいわゆる〈サラ金規制法〉が成立して(2)(3)についてはかなり変わった。すなわち金利については,上限がそれまで事実上年利109.5%(日歩30銭)だったのが,最終的に40.004%(同10.96銭)に引き下げられ,取立てに関しては威圧的な取立てや深夜の取立てが規制された。
日本の金融機関は第2次大戦後,人為的低金利政策や融資集中の機構のなかで企業金融が中心となり,一般消費者の利用できる消費者金融や小口金融はほとんど顧みられない状況にあった。かつての手軽に利用できた質屋,頼母子(たのもし)は時代のニーズにそうことができず,簡単に手軽に借りられる機関が必要とされていた。高度成長のなかで所得の伸びも著しく,若年層を中心に借金を苦にしない層が増加したり,〈消費は美徳〉思想のもと,金利よりも消費の満足度を先取りしようという時間選択を行う気風が生まれていた。手軽に小口の資金を簡単に借りられる機関を必要としていたのにこたえたのがサラリーマン金融といえるだろう。高度成長で年々所得が大幅に増加していたときはよかったが,低成長時代になって所得の伸びが鈍化すると,返済に行き詰まり金融業者をつぎつぎと渡り歩く者の大量発生を生み,取立ての厳しさとあいまって1970年代半ばから自殺,蒸発,一家離散等サラ金禍といわれる事態も生まれた。
サラリーマン金融は,出資法の規定で都道府県知事への届出だけで営業できたため,業者の乱立が目だった。77年の外資系サラ金業者の上陸に加えて,80年ころから割賦販売会社,スーパーなどもその高収益に着目して続々と比較的低金利で参入した。こうしたなかで83年5月,前述のサラ金規制法が公布され(同年11月施行),貸出金利も低下する一方,貸倒れも急増,中小業者を中心に転廃業に追い込まれるところが急増している。
→貸金業 →質屋
執筆者:森 静朗
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
一般給与所得者向けの小額、無担保の短期の金銭融資業務をいう。現在の消費者金融事業の先駆けともいえ、利用者がサラリーマン(給与所得者)中心であったことから、1970年代にはそうよばれた。しかし、1970年代後半には、「高金利、過酷な取立て、過剰融資(3K)」で、借り手の蒸発や一家離散、自殺等が社会問題化し、「サラ金地獄」とよばれた。そのため、いまでも消費者金融をサラ金と蔑称(べっしょう)的によぶこともある。前記の3K問題は繰返し注目され、近年では、返済のために借金を重ねて、過剰債務に陥る多重債務者問題とよばれている。2006年(平成18)の貸金業規制法改正(改正に伴い貸金業法に改称)の主要目的の一つはこの多重債務者の救済にあるといわれている。
[晝間文彦]
『渋谷隆一編『サラリーマン金融の実証的研究』(1979・日本経済評論社)』▽『上田昭三著『個人ローンの実態と展望』(1981・東洋経済新報社)』▽『伊東眞一著『消費者金融システム論』(2000・晃洋書房)』
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