海底ケーブル敷設船(読み)かいていけーぶるふせつせん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「海底ケーブル敷設船」の意味・わかりやすい解説

海底ケーブル敷設船
かいていけーぶるふせつせん

海底海底ケーブル敷設したり、修理するための船。ケーブル敷設船ケーブルシップともいう。外形上の特徴は、海底ケーブルを出し入れする大きな船首車輪、船尾からケーブルを敷設する船尾シュートをもつことである。また、船倉には長い海底ケーブルを格納するケーブルタンクがあり、ケーブルを円錐(えんすい)形の軸に巻き付けて積載する。

 海底ケーブルを敷設するには、まず沖合いから海底ケーブル陸揚局に向けケーブルの陸揚げ作業を行う。陸揚げ作業では、ケーブルは船首車輪を通して繰り出し、損傷を防ぐためいったんバルーンブイ海中に浮かしたのち、このブイを切りケーブルを海底に沈める。次に敷設船は180度方向を転換し、船尾シュートより沖合いに向けてケーブルを敷設する。同様にして他方の陸揚局からもケーブルを敷設し、両者を敷設船上で接続し、海底に沈め、敷設作業を完了する。海底ケーブルの修理を行うには、まず陸揚局から測定した障害点付近に敷設船を回航し、錨(いかり)によりケーブルを探線する。錨にひっかかったケーブルは、船上に引き揚げて切断し、一方の端にブイをつけ海底に沈めておく。次にもう一方の障害部分を取り除き、修理用ケーブルを継ぎ足して先ほどのブイに向け敷設、両者を船上で接続し、海底に沈める。

 従来海底ケーブル作業はこのようにして海底面に敷設されて置かれたままであった。1970年代以降は沿岸の漁業活動などにより、ケーブルをひっかけるおそれがあるため、原則的に大陸棚までの浅海部分は海底下に埋設する方法をとっている。2002年現在、日本では、KDDパシフィックリンク号(KDDIグループ)、すばる・黒潮丸(NTTグループ)などが稼働中である。

[定金丈夫]

『郵政省編『海底ケーブル通信新時代の構築へ向けて』(1988・大蔵省印刷局)』『郵政省編『世界を結ぶ光海底ケーブル』(1992・大蔵省印刷局)』『日本造船学会海中技術専門委員会編『海中技術一般』(1992・成山堂書店)』


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「海底ケーブル敷設船」の意味・わかりやすい解説

海底ケーブル敷(布)設船 (かいていケーブルふせつせん)
cable layer
cable ship

ケーブル敷設船ともいう。海底に通信用や電力用のケーブルを敷設,埋設したり,損傷ケーブルなどを引き揚げ修理し再埋設する目的に使用される船。定められたルートに沿ってケーブル埋設機を曳引するため,船位測定装置やソナーなどの精密機器を装備する場合が多い。敷設ケーブルは,船首端あるいは船尾に設けられた滑車から,きょう導環と呼ぶガイドリングを通って埋設機に供給され,滑車は波浪による衝撃を避けるため船内格納式となる場合もある。船内各層にはケーブル作業甲板を設け,ケーブルエンジン,制御室などが配置される。作業甲板下にはケーブル倉があり,その中央部にケーブル巻取り用のタンクコーンが設置されている。作業中の位置保持のために高度の操船性能を要求されており,可変ピッチプロペラ,サイドスラスターを装備する場合が多い。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「海底ケーブル敷設船」の意味・わかりやすい解説

海底ケーブル敷(布)設船【かいていケーブルふせつせん】

ケーブル敷設船とも。海底ケーブルの敷設,引揚げを任務とする船。船倉にケーブルタンクがあり,船首に滑車を装備するなどして連続してケーブルを敷設する。ケーブルの保護のため海底の土中に埋設することもできる。日本では現在,国際電信電話会社のKDDオーシャンリンク(9510トン),KDDパシフィックリンク(7764トン),日本電信電話会社のすばる(9700トン),黒潮丸(3340トン)などが稼動している。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の海底ケーブル敷設船の言及

【敷設艦】より

…機雷は投下軌条の下に装備されているチェーンコンベヤにより,急速にかつ一定間隔に艦尾の投下口より海中に投下敷設される。現在,海上自衛隊の艦船分類では,敷設艦とは海底ケーブルを敷設,修理する艦cable layerのことで,機雷を敷設する艦は,機雷敷設艦と称されている。【出光 照生】。…

※「海底ケーブル敷設船」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android