改訂新版 世界大百科事典 「海賊映画」の意味・わかりやすい解説
海賊映画 (かいぞくえいが)
pirates films
〈チャンバラ活劇swashbuckler〉として総括される西洋中世から近世に題材をとったアクション映画のうち,海洋を舞台に,海賊またはそれと戦う者を主人公にして,船上の剣戟(けんげき)乱闘などのスペクタクルを展開するもの。1930年代から50年代にかけて,チャンバラ活劇のもう一方のジャンル,騎士道映画とともに盛んにつくられた。海賊映画のスターには,エロール・フリン(《海賊ブラッド》1935,《シー・ホーク》1940,《すべての旗に背いて》1952),タイロン・パワー(《海の征服者》1942),ポール・ヘンリード(《海賊バラクーダ》1945),ルイス・ヘーワード(《地中海の虎》1949,《海賊船長》1952)らがいるが,バート・ランカスター,カーク・ダグラス,リチャード・ウィドマークらの〈現代劇〉のスターも海賊映画に出演している。ジーン・ピーターズ(《女海賊アン》1951),モーリン・オハラ(《すべての旗に背いて》1952)といった女海賊スターも生まれ,またミュージカル版としてジーン・ケリー主演の《踊る海賊》(1948),コメディ版としてアボット&コステロの《凸凹宝島騒動》(1942)などがある。60年代初めにはイタリアでも史劇映画と並んで〈海賊映画〉がつくられ,その中にはエロール・フリンの息子ショーン・フリンを主役にした《新・海賊ブラッド》(1962)などもあったが,60年代後半以降は海賊映画はほとんどつくられていない。海上で戦闘のスペクタクルを展開するには,少なくとも2艘(そう)の帆船が必要であり,製作費がかさむということも衰退の原因の一つで,67年の《王者の海賊》が〈ハリウッド最後の海賊映画〉と呼ばれた。例外的に76年の《カリブの嵐》があり,また異色の海賊映画としては,アンソニー・クインの海賊が誘拐した少女に愛を感ずる《海賊大将》(1965),《ジョーズ》の原作者ピーター・ベンチリーの原作による,現代に生き残っていた海賊の登場する《アイランド》(1980)がある。
→アクション映画
執筆者:宇田川 幸洋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報