海運取引所(読み)かいうんとりひきしょ

改訂新版 世界大百科事典 「海運取引所」の意味・わかりやすい解説

海運取引所 (かいうんとりひきしょ)

本来は各種の海運取引が行われる具体的な場を指す。ただし,特定の場所と時間において取引が行われる具体的市場形態にあるのは,17世紀後半のコーヒー・ハウスにその起源をもつロンドンボルチック海運取引所The Baltic Mercantile and Shipping Exchangeのみである。このボルチック海運取引所は,海運ブローカー船主運航業者荷主,その他関係者等で構成される会員制をとり,これら各分野の会員から選出された代表者で構成される委員会によって管理運営されている。この海運取引所を利用する会員の顔ぶれは多様であるが,海運ブローカーが中心的存在になっている。これらブローカーは毎日1回ここに寄り集まって互いに情報を交換しあい,あるときは船主の依頼を受けて用船者を探し,またあるときは荷主や運航業者の求めに応じてこれら用船者のために適船を探し,船主・運航業者・荷主間の貨物運送契約や用船契約の仲介をする。また,船舶売買も仲立ちする。さらに,今日では航空機のチャーター取引に関しても仲介している。この海運取引所で成約された取引の運賃,用船料,船価等は,ただちに国際電話,電報ないしはテレックスなどで世界各地のローカル市場の船主,運航業者,荷主および海運ブローカー等に伝えられ,彼らの取引の有力な指針になっている。第2次大戦後,アメリカと日本が飛躍的な経済発展により荷主国として,また海運国としての地位を高めるにしたがい,これら両国で成約される海運取引がしだいに多くなり,それだけボルチック海運取引所の相対的重要性が低下しているが,長い伝統のもとにつちかわれたロンドン海運ブローカーの職業的知識と経験,豊富にして正確な情報の収集と提供,公正な取引などが世界の船主や用船者筋から変わらぬ信頼を集め,世界の海運市場取引に指導的役割を果たし続けている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「海運取引所」の意味・わかりやすい解説

海運取引所
かいうんとりひきしょ
shipping exchange

海運集会所ともいう。船舶の売買、用船など海運関係の取引が集中的に行われる、具体的な意味の海運市場をさす。船主(オーナー)、海運業者(オペレーター)、海運仲立人(ブローカー)、有力荷主(シッパー)、海上保険業者など海運関係業者を会員とする団体が、定期的に集合して、船舶の需要供給の出合いを図り、内外主要港の荷動きの状況、運賃状況、船舶の動きなどの情報を集めて、それらを会員に提供する。世界的に有名な取引所としてはロンドンのバルチック海運取引所、ニューヨークのマリタイム海運取引所などがある。とくにバルチック海運取引所は、17世紀後半に、ロンドンのバルチックにあったコーヒー店に海運業者が集まって、海上運賃などについて話し合いを行ったのに始まり、イギリスの海運業の国際的な発展に伴い、1903年海運取引所として正式に発足した。日本では東京に日本海運集会所がある。

[鳥谷剛三]

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