日本大百科全書(ニッポニカ)「用船」の解説
用船
ようせん
チャーターcharterともいう。荷主(用船者)が船舶所有者(運航業者)に貨物を運送させる形態には、個品運送、航海用船、長期運送とがあり、また、運航業者が貸渡(かしわたし)業者(船舶所有者)から船舶を賃借する形態には、定期用船、裸用船、特殊な運航委託とがある。日本の商法では、航海用船のみを用船としているが、実務では個品運送以外をすべて用船とよんでいる。
個品運送affreightment in a general shipは、主として海運同盟を基盤とした定期船による運送であって、その契約は船荷証券をもってかえ、荷主は賃率表に従って運航業者に貨物を依頼する。航海用船trip charter(voyage charter)は、不定期船による運送であって、運航業者が運賃と引き換えに船舶の全部または一部を荷主に提供し、その貨物を航海を単位として特定区間で運送することをいう。その際、航海用船契約が結ばれるが、実態は運送契約である。それには標準書式があり、船名、貨物の種類と数量、積地・揚地、運送の時期、運賃(用船料)、荷役費の負担、停泊期間、滞船料・早出料などが記載されている。ただ、船舶の提供者は運航業者だけでなく、荷主が自分の貨物だけでは余積(よづみ)が生じる場合、自ら運航業者と同じ立場にたって他の荷主と用船契約することがある。航海用船(契約)には、本来の運賃用船のほかに、船腹用船や日貸用船がある。また、用船期間の決め方は、単独航海用船だけでなく、連続航海用船もある。さらに、インダストリアル・キャリッジのもとで、それが6か月から10年にもなり、長期運送(契約)が発生することとなった。
定期用船time charterは、運航業者が貸渡業者から船員の乗り組んだ船舶を一定期間、用船料を支払って借り入れ、運賃を稼ぐ形態である。その契約の性格について諸説があるが、日本では賃貸借と労務提供の混合契約とされている。裸用船bare charterは、運航業者が貸渡業者から船舶のみを一定期間借り入れ、自社の船員を乗り組ませて自社船のように運航する形態である。その契約は純粋な賃貸借契約である。運航委託operating agreementは、船舶所有者が運航採算についていっさいの責任を負い、ただ運航業務のみを集荷力のある運航業者に委託し、手数料を支払う形態である。これら運航業者と貸渡業者の間は対等な取引関係ではなく、支配・従属の関係にある。
[篠原陽一]
『篠原陽一編著『現代の海運』(1985・税務経理協会)』▽『川上博夫・中橋誠著『外航海運の営業実務』(1994・成山堂書店)』