溶原菌(読み)ようげんきん(その他表記)lysogen

翻訳|lysogen

改訂新版 世界大百科事典 「溶原菌」の意味・わかりやすい解説

溶原菌 (ようげんきん)
lysogen

細菌宿主とするウイルスバクテリオファージ,単にファージともいう)には,感染後,細胞内で増殖して宿主を死に至らしめるものと細胞内に潜伏してしまうものがある。後者の場合,ウイルスの遺伝物質(ゲノム)は宿主染色体の一部として組み込まれており,その発現リプレッサーと呼ばれるタンパク質の働きで大部分抑制されている。組みこまれた状態のウイルスのゲノムをプロファージと呼ぶ。このような状態の細菌は溶原菌と呼ばれ,一見正常な細菌と区別がつかない。溶原菌に紫外線などが作用するとリプレッサーが破壊され,かくれていたウイルスの増殖が始まり,細胞は死ぬ。

 溶原菌にみられる宿主細胞とウイルスの関係は,ヒトを含む高等生物の細胞でもみられる。癌ウイルスはその典型であり,ウイルスのゲノムが宿主細胞染色体に組み込まれている。この場合には,なんらかの原因で抑制がはずれると,ウイルス・ゲノム上の発癌遺伝子が発現し,宿主細胞に病的な変化をもたらす。
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百科事典マイペディア 「溶原菌」の意味・わかりやすい解説

溶原菌【ようげんきん】

非増殖性のバクテリオファージ(プロファージ)の感染を受けた細菌。感染を受けることを溶原化という。プロファージのDNAは細菌の染色体に組み込まれていて,細菌の分裂とともに複製される。紫外線照射や化学物質などの人為的操作でプロファージのリプレッサーが非活性化されるとファージの増殖が誘発される。形質導入現象は,溶原菌を用いて観察される。

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