改訂新版 世界大百科事典 「濬県古墓」の意味・わかりやすい解説
濬県古墓 (しゅんけんこぼ)
Xùn xiàn gǔ mù
中国河南省濬県の西35kmの辛村付近に残る西周時代と春秋前期衛国の古墓群。1931年に多数の遺物が出土したため,32-33年に郭宝鈞らによって調査された。古墓群は,淇河の北岸,辛村の東側に東西約500m,南北約300mの範囲に散在し,大型墓8基,中型墓6基,小型墓54基,車馬坑2基,馬坑12基が発見された。大型墓は長方形竪穴木槨墓で,二層台が見られ,槨室内には棺が納められていたと思われる。中型墓も長方形竪穴墓であるが,木槨のないものも多く,小型墓は木棺を直接埋めている。一例として1号墓を紹介すると,この墓は平面〈中〉字形を呈し,墓室の南北に墓道が付く。墓室は長さ10.6m,幅9mで,深さは8.6m,中央に長さ3.2m,幅2.1m,深さ2.4mの槨室があり,周囲に二層台が設けられている。南墓道は長さ30.8m,北墓道は長さ15.5mで,墓の南北全長は56.9mに及んでいる。この墓は盗掘を受けていたが,各種の車馬具や青銅飾,青銅鉛,玉器類,陶器などが副葬品として発見されている。馬坑は,馬1~8頭を入れた方形竪穴で,車馬坑は,車と馬を埋めているが,3号車馬坑には,12両の車と72頭の馬,8頭の犬が埋められていた。墓と車馬坑から礼器(祭祀用の容器),武器,車具,馬具などの青銅器,灰陶,灰釉陶器が出土した。
執筆者:飯島 武次
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報