中国考古学で土器を区別する用語。広義には灰色ないしはそれに準じる色調の土器をさす。狭義には酸化炎で焼き上げた赤焼土器(紅陶)や,土器の表面に煤を沈着させた黒陶に対して,焼成の最終段階に空気を送らず,還元炎で焼き上げた青灰色の土器をいう。狭義の灰陶は竜山文化になって出現し,殷・周時代をへて現代まで用いられている。殷代では土器全体の98%が灰陶であり,泥質灰陶と砂質灰陶にわかれる。前者は混和剤をいれないもので,一部に水簸(すいひ)を行い表面を磨き上げた精製品をふくむ。後者は砂粒を混ぜ硬く焼きしまっている。多くの土器では拍打成形による縄蓆文を器表面にのこし,これを突帯・凹線・篦(へら)描き線によって区画し,一種の文様とする。食器類は無文が多いが,なかには底部に縄蓆文をとどめるものがある。殷代の窯は新石器時代以来の形をとどめ,燃焼室の上に数本の穴をあけた天井をつくり,その上に焼成室と煙出しをつくる。このような窯は概して小型で円筒形のものが多い。また,焚口を粘土塊で密封して還元炎焼成を行ったことを具体的に示す例もある。春秋時代以降,灰陶は日常雑器として商品化し,文様が少なくなるが,縄蓆文やそれを区切る凹線文,篦描き線などはなお残存している。しかし,食器類は無文で表面に轆轤目(ろくろめ)をとどめるにすぎない。秦・漢の窯は大型で,馬蹄形ないしは長方形を呈する。焚口の内側約1/3を燃焼室として深くし,残りの2/3を焼成室として床を高くし,奥壁に煙道をもうけるのが一般的である。瓦塼,水道管などを焼いた窯も基本的に同じであり,製品の色調も青灰色を呈している。秦の咸陽城出土の土器や瓦には共通する銘文があり,瓦工と陶工が兼業する場合のあったことがうかがわれる。
執筆者:町田 章
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中国でつくられた灰色系土器の総称。一般に土器は酸化炎で焼いた場合、粘土中の鉄分が赤色の酸化第二鉄となり紅色系を呈するが、適度に通風を制御した還元炎で焼くと酸化が進まず、灰色系の土器すなわち広義の灰陶となる。華北地方における土器の主体は、新石器時代の仰韶(ぎょうしょう)文化期末から竜山(りゅうざん)文化期にかけて、還元炎焼成を可能にする窯(かま)の発達に伴い、紅色系から灰色系へと変化した。灰色系の土器は殷(いん)代になるとさらに一般化し、以後、実用器あるいは明器(めいき)類の中心として、磁器の使用が広まる唐・宋(そう)期まで残存した。しかし、このうち狭義の灰陶とは、彩陶(さいとう)、黒陶(こくとう)などと併称され、新石器時代から殷代に盛行したそれをさす。竜山文化期の灰陶は、黄河中流地方にもっとも一般的な土器であったが、黒陶が並行して発達する東方の黄河、揚子江(ようすこう)下流地方では相対的に少なく、またその製作法、器種とも異なっていた。前者の灰陶は、普通、巻き上げ法で形をつくり、縄を巻いた叩(たた)き板で器面を拍打して成形する。このとき、その叩き痕(あと)である籃文(らんもん)、縄文が器表に施文される。代表的な器種として、袋状の三足をもつ鬲(れき)、斝(か)などがある。続く殷代では、灰陶の器種はきわめて多様化した。
[西江清高]
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