陶磁器を売買する店。東日本では瀬戸焼の瀬戸が陶磁器の総称になり、したがって瀬戸物屋の呼称も生まれた。ちなみに、西日本の一部には唐津焼(からつやき)の影響で陶磁器全般を唐津とよんでいる所もある。
瀬戸焼は、窯元と消費者の直接売買であったが、17世紀に京・大坂・江戸に小売専門の瀬戸物屋ができた。これは当時瀬戸焼が、他の焼物と比べていかにポピュラーな商品価値を備えていたかを物語る証(あかし)といえよう。18世紀に入ると、大坂・江戸に卸売りの瀬戸物問屋が現れた。これにより、瀬戸焼だけでなく各地の窯元からさまざまの種類の焼物を集荷し、小売店に卸すという流通システムが確立した。問屋、小売りともに一定地域に集住していたが、小売りのほうは都市の地域的発展に伴い、各地に散住していった。近代の19世紀後半になって、陶器だけを扱う問屋もできた。
[遠藤元男]